火種9


 
「ガーデンを巣立った者は既に部外者です」
バラムガーデンへと続くゲート
友人を訪ねて来た元ガーデン生が足止めされる
「手続きを行った上でおいで下さい」
それならここで待っているから連絡をして欲しい
押し問答を続け
何度か頼み込んで
ようやく連絡を取りに動いた背中に安堵した

「建設が始まった様ですね」
バラムで作られている一つの組織
人材は確保した
設備も揃え始めた
「どの辺りだ?」
ガルバディアに近い海岸沿いは無いだろう
中程に在るガーデンの側も考え難い
だからといってあまり奥まった場所じゃあ、いざという時に対処が出来ない
地図上に指し示された場所
海岸沿いでは無いが、外に適度に近く、バラムガーデンからはさほど離れてはいない
「まぁ、位置的には確かにこの辺りが良いんだろうけどな」
現在バラムガーデンが置かれている付近
さほど広くは無い国土の中で配置場所として都合が良いのはあの辺りだ
「隠す気が無くなったということか」
用地を確保した位ならさほど目立つ事は無い
―――何に使うか解らない訳だしな
だが、建設が始まってしまえばそうは行かない
初めは解らずとも何れ伝わる
「隠す必要が無くなっただろう」
必要が無くなった、か
組織として動かす目処が立ったってことか?
「………早いな」
モノが全部用意出来たからと言って
すぐに使えるモノになる訳じゃない
個々人の能力が高くとも、組織としての訓練は必ず必要になる
「その辺りは上手くするんでしょう」
「まぁ、そうだな」
エスタには関係の無い他国の事情だ
動きとして情報を知る必要はあるが
わざわざ心配してやる義理は無い
ま、それが正しいんだろうが
面倒ごとにならなきゃいいんだけどな
脳裏に、面倒事を運んで来そうな顔が思い浮かんだ

バラム国内で行われている大規模な工事
一国の事に口を出す権利は、ただの民間組織であるガーデンには無い
けれど
「近いわね」
ガーデンからの位置が少しばかり近い
今後はここも考慮に入れないとならないわね
この時はまだ、ガーデンに存在する幾つかの訓練プランに思いを馳せていた
 

 End