火種11
 

 
新天地での生活は、あらゆる事が今までとは違っていて、あらゆる事に戸惑った
今までの常識とは違う常識
それに振り回され、慣れるのに精一杯で
正直、古巣の───ガーデンのことなんか気にする余裕は無かった
気にする余裕が無かったんだから、当然連絡なんか取っちゃいねぇ
───もっとも、俺が連絡をしたところでガーデンの奴等は喜びはしねぇだろうけどなぁ
大統領に連絡が取れず
───少し考えれば、当然だ
スコールのヤツとも連絡が取れず
───ただの学生ってことを考えりゃあ、連絡は簡単に取れるはずなんだが、連絡自体届いてないってことは、やり方を間違ったんだろ
仕方なく俺達に送った通信も、今まで届くことは無かった
───“軍”なんてところは、融通は利かないもの、らしい
───そもそも俺達は“犯罪者”だからなぁ

「………で?」
キスティスからの通信が入っている
上官にそう言われ、風神、雷神と共に通信室へ入室した
エスタ軍に入隊してから既に半年以上、この間、昔の知り合いとは全く会っていなかったコトもあり少しは懐かしい気持ちで居たんだが………
「ラグナさんと連絡が取りたいのよ」
キスティスが繰り返した言葉に、雷神が眉をひそめ、風神が身体を硬くする
“バラムガーデン”の状況が上手くない、だから大統領に連絡をする?
その“だから”の意味がとんと解らねぇ
大統領はガーデンに対しては全くの部外者だ
ガーデンも大統領とはなんの関係も無い
全く関係の無い組織に関係の無い人間が呼ばれる理由は無いだろ
もし、ガーデンと大統領が関係があるとしても、ただの一般兵がどうやって大統領に連絡が取れる?
俺の返事はただ一つ
「そりゃ、無理だ」
それ以外に返答の必要は無い
「──────あなただけが頼りなのよ」
画面の中でキスティスが必死で言いつくろう
「無理なものは仕方ねぇだろ」
なおも何かを言いつのろうとするキスティスを無視して、俺は通信を切った

上官へと礼を延べ通信室を退出する
「サイファ………」
後に続いた風神が何か言いたげな眼を向けるが
「どうしようもねぇだろ」
良くない状況にあるっていうバラムガーデンのことは気になる
力になって欲しいっていうのなら、力になってもやりたい
俺の言葉に、二人が無言で俯く
個人への通信で、俺個人に何かを頼ってきたのならどうにかできたかも知れねぇ
だが、あいつがよこしたのは“エスタ軍”の中のただの一兵卒へと向けた通信
ただの兵士には、権限なんてものは無いんだよ

始めから、手段も方法も間違っていた

 End