適正
 

 
仕事には様々な種類があり
その内容に合わせて適切と思える相手に仕事を配分する
それは当然のこと
当然だが、それを見極めるのはなかなか難しい

バラムガーデンに仕事が依頼された
“要人の警護”
というそれは、何度も経験し手慣れた仕事
そのはずだった、けれど………
書き記された条件の一覧へと視線を向ける
本人にも気づかれない様に警護する事
「難しいわね」
要人警護の依頼は何度かこなした事がある
けれど、そのどれもが本人の傍についての警護
依頼にある様に本人からも隠れての警護というものは請け負ったことが無い
「気づかれない様にってことは、見えない範囲に居なければならないってことよね」
遠く離れた場所からの警護
SeeDのカリキュラムにはそういった類の技術を教えるカリキュラムは無い
遠くからの警護では何かがあった時に間に合わないかもしれない
「困ったわ」
そうつぶやいた私へと問いかけの声がかかった

それなら、変装すれば良いんじゃない?
依頼の話へと返った返事はそんな言葉
その言葉を聞いて、考えて
それが良いかもしれない
そう言ったのは確かに私
けれど………
彼等が上げる変装の内容に頭が痛い
依頼内容は“要人警護”だというのに、要人に気づかれずに警護するのに“一般人”に変装しても意味が無い
「一般人は要人の傍に近寄れないと思うわ」
ため息混じりの私の言葉に、彼等は次の変装を考えてはくれているけれど
ダメね
どれもこれも使えない
使いようが無い内容ばかり
仕方ない、わね
私も含め、変装や影からの護衛なんていう知識は誰も持ってはいないんだもの
こんな時にはどんな変装がふさわしいか、なんて解るはずも無いわ
ため息と共に、依頼書へと視線を落とす
「この依頼を受けるのは無理、ね」
勿体ないけれど、仕方が無いわ
この依頼を処理するだけの能力を持つ者は残念ながら居ない
こなす事の出来ない仕事を契約する訳にはいかないもの
まだ口論している仲間達を見ながら、キスティスは書類の処理を終えた

数週間後
ある雑誌に1つの記事が掲載された

適正というものがある
ガーデンはSeeDを養成する為の機関であり
SeeDは傭兵である
彼等は“戦う”ことは可能だが
それ以外の仕事の適性についてはそれほど高くは無いと結論づけられる


 End