気晴らし 
 

 
幾体かのモンスターの死骸が辺りに散らばる
周囲の気配を探り
体の力を抜き、ブレードを肩の上へと乗せる
モンスターの気配は感じない
軽く息を吐き出す
───戦闘終了
斃れたモンスターを一瞥し、ゆっくりと足を踏みだした

息苦しい
ふとした瞬間浮かぶ気持ち
ごく普通のやりとりをして
ただ当たり前の生活をして
周りが“当たり前”だと言う日々
戦う必要の無い日常
戸惑いはわずかな時間で、人が言う”当たり前”は普通で当たり前の事になった
当たり前になった、はずだ
けれど、息苦しい
時折、思い出した様に息苦しくなる
のど元を緩めて、ゆっくりと息をする
気休めの行為
幾度か呼吸を繰り返して、息苦しさが改善されればそれで良い
けれど、どうしても───
あきらめた様に息を吐き
それから当たり前の様に武器を手にする
武器を手にする事は別におかしなことじゃない
街の外へ出る時には必ず携帯するもので
身を守る為に必要なもの
ただ
自らモンスターを狩りにいく者はそういない
「………しかたない」
戦う事、戦う為の技術を磨くこと
それが今までの日常だった
時折感じる息苦しさは
戦わずにいる事への違和感
だから、どうしようもなくなった今、武器を手に街の外へと向かう

幾度目かの戦闘
息苦しさも薄れた頃
足を向ける先に、街が見えた

 End