目に見えた変化
 

 
並べられた様々な品物
人目を引くように配置されたそれは、狙い通りに人の足を止めている
この辺りでは見ない珍しい意匠
最近ようやく出回りだした異国の品物
品物が並ぶのが商店ではなく、露店である事を考えれば、旅の商人なんだろう
異国の商人か
人通りの多い場所で露店を広げている以上
これは許可を得た行為なんだろう
「まぁ、悪いことじゃないよな」
閉じられていた世界が広がることは悪いことじゃない
………余分なものも入ってくることは間違いじゃないけどな
露店へと引き寄せられるように足を進める人の流れを目にしながら、その場を立ち去った

少し大きめの広場
どこから来たのか、芸人や商人たちが賑やかに声を上げている
芸を披露している者たちの大部分は素人で、露店を広げているものたちの半分程度も素人のようだ
「この辺りもずいぶん賑やかになったな」
ほんの数年前には、こんな風に露店を開くものなんてのは居なかった
………別に禁止をしていた訳じゃない
“安全”では無いから
それも少し違う、正確には安心することができないから
すぐ近くに脅威が居たわけじゃない
遠く離れた場所
決して手出しは出来ない場所
そんな場所に存在した脅威
「気も楽になったんだろうな」
一歩町の外に出れば相変わらずモンスターは襲ってくる
身の危険自体は今までとは変わらない
変わらないが………
「理解できない脅威はひとまずなくなったからな」
その言葉にただ頷く
知らぬ間に操られる
気づいた時には自分の意思は封じられている
したくも無いことを行い
親しいものと争う
「体験したからなぁ」
臆病だ、とは言うことは出来ない
あの当時この国に住むほとんどの者は実際にそんな体験をしている
でも、まあ
「過去は過去だ」
今これだけ賑やかなのは素直に喜ぶべきだよな
納得したように頷くと、人が集まる芸人の元へと足を進めた

 End