花束 

両手いっぱい
あふれる程の花を抱えて
連なる丘を進む
年に数度訪れる場所
………数回しか訪れる事のない場所
今居る場所はここから遠く、遠すぎて───
花々の中に埋もれた墓標が見える
足を止め、手にしていた花束を捧げる
「………ただいま」
そう呟いて、語りかける
辺りを渡る風のざわめき
遠くから聞こえる鳥の声
こちらを伺うモンスターの気配
決して静かでは無い空間に彼女の声は聞こえない
それでも
最近起きた事を話す
子供達の事
自分の事
身の回りの事
幾つもの話を終えて
そっと目を伏せる
遠く記憶の中で声が聞こえる
去りがたく立ち尽くして
日が陰る頃ようやく立ち上がる
「………また来るからな」
思い出すのは困った様に笑う姿
彼女の居る場所は遠くて
なかなか行く事が出来ない
それでも
だからこそ、出来る限り───


 End