破滅の足音 

その場を離れれば解る事ってのは色々ある
たとえば長い間過ごした場所の異常性
───まあ、それに関しちゃ随分前に解っていたことだが
そしてどれだけ危うい立場にあるのか
───これに関しちゃ多少複雑な思いはある
けどまぁ、今の自分は立派な部外者だ
わざわざ警告をするまでも無い
………まぁ、そんな風に思っていた
いたんだがなぁ

同情が混じった呆れた視線が、俺達を呼ぶ
「連絡が入ってる」
どこからとも誰からとも言わずに告げられる
それは秘匿する必要があるとか大層な理由では無く、告げる必要も無いからだ
このまま通信に出ずに無視してやろうか
そう考えるが
自分のものでも無い回線を使っている以上、その手は使えねぇ
「断ってるんだがなぁ」
俺の言葉に両脇から、苛立ちを混ぜた同意が聞こえる
同情が混じった上官に頭を下げて、俺達は足取りも重く通信室へと向かった

最低限の相手はする
だが、適度に距離を置く
反対する者も誰も無く、すんなりと決まった方針
それと同時に“軍”から上げられた報告
頻繁に送られる通信
通信相手の断りの言葉にも耳を傾けること無く、権利を振りかざすかの様な言葉
「決定事項だ、無視して構わない」
告げた言葉に安堵の息がこぼれる
「あそことは、直接的な関係は無い、気を遣う必要は無いぞ」
確かに中に居る人間は“知り合い”かもしれない
だが、決してあそこ自体には良い印象は無い
幾人かが、そっと頷く姿が見える
内情を知っていれば、誰もがあそこと積極的に関わり合おうとは思わないだろう
あの場所に残されたのはまだ20前後の子供達
偏った知識だけを持つ、どこか歪んだ子供達
責任を取るべき大人達は、早々に放り出して逃げ出した
ろくな事にならないってのに誰が関わり合いたいと思う?
他の所も早々に手を引くだろう

そう結論づけて数ヶ月
「思ったよりも早かったな」
彼女達はまだ気がついてはいない様だが、他の国々も同じ様に距離を置く姿が良く見える
いつ頃気がつくか
そして、どんな対応を取るか
なんとなくその結末は予想がついた

 End