危険 

夏の暑い時期
エスタでは街中に人の姿が見当たらなくなる
それは比喩では無く事実
出歩く人の姿が全く無くなる日
それは暑さを逃れる為の防衛手段であり
それが許されるのは
その為のシステムが確立されているから

空調の効いた室内から空調の効いた廊下へ
開いた扉が人を通すこと無くそのまま閉まる
少し時間を空け、もう一度空調が効いているはずの廊下へと続く扉を開ける
「………」
生温い空気が身体に触れる
「こりゃ暑そうだな」
ため息混じりに呟いて、廊下へと足を踏み出す
室内と廊下の設定温度は同じ
同じだが、どうやら日の当たらない室内と日差しが差し込む廊下では温度に差が生じたらしい
「外には出れないよな」
っていうか、出たくないよなぁ
外に出なかったからといって困る事は特には無い
むしろこんな時はーーー
音が鳴り響く
呼び出しの音では無く
警戒を促す音
「モンスターでも出たか?」
呟きながら足早に廊下を進む
暑い夏の日にモンスターの襲撃は困る
気温に関係無く動く事の出来るモンスターと気温の影響を受ける人間じゃあ、どう考えてもこっちが不利だ
ガラスの窓の外に見える景色が揺らいでいる
間違い無く外は暑い
機械でどうにか対応する事になるだろうな
………俺も出たくはないし
聞こえてきた声が外出を控える様告げる
この気温じゃ元々出てる奴なんてのはいないだろうけどな
エスタの民ならば、モンスターの危険性も暑い日の危険性も知っている
この2つが切り離して考える事が出来ないものだということも良く解っている
目的地にたどり着くと同時にモンスターの襲撃を報告された

市街地で戦闘が始まった事が告げられる
モンスターに対処する兵器の数と種類
対応する部隊の名前は無い
兵士は誰も参加しないってことだろ
報告されている兵器には機械兵の名は無い
まぁ、まだ実戦投入には早いか
「モンスターが殲滅されました」
数分後に告げられた言葉
「一応外出しても問題無い事を伝えます」
そう、モニター越しの相手が告げる
「おう、まぁこんな日に出歩く物好きは居ないと思うけどな」
本来ならここにいなけりゃならない奴等のうち半数以上は実際にはこの場所には居ない
モニター越しの彼等といつも通りに仕事を進める
ガラス越しにじりじりと焼けるような暑さを感じながら、上がる気温にため息をついた

夏の暑い日
高くなった気温に、家の中に居た者は外出を控え
家の外に居た者は、そのままその施設にとどまる
それはただ暑いからが理由では無く、危険度が高くなるから
それはエスタに住む者なら誰でも知っている事
危険を軽減する為に、家を出る必要の無いシステムが構築されている
それも又、エスタに住む者なら当然知っている事

 End