温度 

窓の外に雪が積もる
窓から吹き寄せる冷気
部屋の中には暖炉で燃える火の匂い
身体の一部にだけ当たる火の熱さ
身体の両側で熱と冷気を感じとって
その温度差にまるで今の状況の様だと笑ってしまう
本人達にしてみれば緊張感溢れる事態なのかもしれない
けれど、当事者以外の第三者にしてみれば、いい加減どうにかしてくれないかな
なんて程度の事
二人の間に横たわる温度差が
実際に身体に感じる温度差と重なり合って
正直に言えば、とっても居心地が悪い
ほどよく全身が同じ温度になる快適な位置へと移動して、のんびりと過ごしたいんだけど
失敗したなぁ
今このときにこの部屋にいたこと
よりによって、暖炉に近いこの場所に座っていた事
今度は一体何をしたのか知らないけれど、巻き込まないで欲しいんだよね
にらみ合う訳では無く、むしろ視線を合わせないようにしているけれど
二人の間にある緊張感が心地悪い
………一般人の私にはいろいろとつらいものがあるんだけどな
さっきから息苦しさも感じている
ここでこうやって心の中で愚痴を言うのも、動くに動けないから
ほんと、どうにかして欲しいんだけどな

隣の部屋から二人の様子を覗き見る
相変わらず会話も無く二人で黙ったままお茶を飲んでいる
お互いに飲み物に口をつけるだけさっきよりもましなんだと思う
けど、相変わらず
何か話があるはずなのに、一向に話をする様子も無い
何かやらかしたんだと思ったんだけどな
もしそうだったとするならば、こんな風にお互いに黙ってるなんてことはなさそうだもの
今回は別に何かをしてしまった訳じゃないんだと思う
なら、一体どうしたのか?
なんてことは、さっぱり想像も付かない
まぁ、こんな風に観察していても仕方ないし
───本当はどうしたのか、どうなるのか興味は尽きないけれど
あの二人の事は放っておくことにしよう
「また、巻き込まれるのも嫌だものね」
何があったのか気にはなるけれど
何があったのか教えてくれる伝手はある
だから、今知らなくても大丈夫
そう自分に言い聞かせながら、そっとその場を立ち去った

多分距離が近づいた
どんな心境の変化があったのか
何があったのか
あの時、結局どうしたのか
それは結局私が知る事は出来なかったけれど
結果だけはこうして目の前に広がっている
会話が弾んでいるとはとても言えないけれど
二人でなされる会話
スムーズとは言えないけれどちゃんと言葉が交わされて
変な緊張感も存在していない
そして何より、ここに居ても居心地が悪くならない
何があったのか気になるけれど
結果が良ければ良いよね
そっと納得して、飲み物と共に彼等の輪の中へと入った
 

 End