アンケート―スコールの場合―


 
記入するように、と回されてきたアンケートは変わりばえのない質問
あまりにもいつも通りの質問なので、
―――本当に必要なら誰かが、公式データを元に記入をする筈
スコールは躊躇う事無くソレをゴミ箱へと捨てた

テーブルの上に書きかけのまま放り出された1枚の用紙
アンケートの存在自体を忘れかけた頃、多分同じだろう用紙を別の場所で見かけた
スコールはなんなとく、用紙に手を伸ばして内容に目を通す
並んでいる文字は目新しいことを綴っている訳じゃない
良く知っている情報が、たぶん真面目に並んでいる
アンケートなんて、どこが面白いんだ?
アンケート用紙を元の場所へと戻し、スコールはすぐ側に置いてあった本へと手を伸ばした

「そういやスコールの所には、アンケートは来なかったのか?」
記入をしていなかった最後の一箇所へ書き込みながらラグナが聞いてくる
「………さぁ」
ラグナの問いかけに、かろうじて用紙が届いた事は思い出したが、不必要な事を言うとラグナがうるさい事は解っている
「スコールのアンケートって見たことあるよ、なんの面白味も無い答えばっかりだったけど」
何かの雑誌でも見たんだろう、エルオーネが答えを返し、2人の問いかけるような視線がスコールへと向けられる
「ガーデンが答えてる」
「ああ、そういうことか」
決して嘘は言っていないが、真実とも言えない回答に、ラグナは勝手に納得した

「それで、スコールはアンケートの類も嫌いなの?」
2人きりになった頃合いを見計らって、エルオーネがさりげなく問いかける
アンケートを見たエルオーネは解っている様な感じはしていた
スコールだけが自分で答えていない事は、他のゼルやセルフィの回答を見れば一目瞭然だ
だが、解っている筈なのに何も言わなかったから、油断をしていた
―――嫌い?
「………聞くまでもなく、嫌いというか、苦手そうではあるけど」
答えに躊躇うスコールの様子にエルオーネが小さく肩を竦めてみせた

元々スコールは、自分の事を聞かれる事も嫌いだし、自分の考えを人に話す事も苦手だ
だから自然、どこかの取材とか誰かが依頼する講演とか、そう言ったモノはどうしようもないモノ以外は全て断っている
バラムガーデンの人間には周知の事実だったので、ソレに対して一言二言愚痴を言われる様な事はあっても、強要される事は無い
お陰で、幾度かの経験で幾分慣れた友人達とは違い、より一層その類が嫌いになっているのだが、スコールは、ソレと同じ位アンケートが嫌いだ
取材もアンケートも、似たような分野に位置する為誰も深く追求する事はないが、アンケートに回答しないのには他に理由がある
回答に困る箇所がたまに在ること
それと、“どうすれば良いのか解らない箇所”が在ると言うこと
それはアンケートには必ず存在する項目で、きっと誰も疑問に思う事の無い箇所
回答したくない箇所は書き込まなければ良い
というのは、アーヴァインの言葉だったとは思うが
その項目が、必ず書き込まなければならない場合は?
だから、スコールはアンケートを記入しない
書き込む時は、その問題に結論が出たその時に―――
それまでは、誰かが登録されたデータベースを元に回答を仕上げてくれるはず
 

 End