決別

数ヶ月
長いようで短い月日が流れ、随分この環境にも慣れてきた
慣れると同時に
この場所だからこそ学ぶ事の出来た事
───歴史の裏側
秘匿された、知られてさえいなかった数々の事柄
“魔女”がこの地で行った数々の事
この場所でしか知る事の出来ないだろう数々の真実
“魔女”と続けられた争い、その結末
それから、知る事も出来なかっただろう研究成果
“魔女”が行っていた事、推測される能力
伝えられている結果が真実だとは限らない
歴史は誰かの都合の良い様に書き換えられて
真実は事実を含ませながら上手く加工される
長くは無い人生経験の中で学んだこと
だが、それでも、その中の大部分はそれがきっと真実だろうと、そう思っている
この地に居る事で知った数々の事
過去に起こった不幸な出来事
それから、かつての出来事の中で見た光景
人々の異様な程の熱狂
僅かな時間で人々に受け入れられ支持された“魔女”の姿
操られていたとしか表現出来ない人々の様子
───魔女の呪い
付けられた名称が言い得て妙だと思った
それが………
それを受け入れた事が一つの切っ掛け

知り合いからのしつこいほどの連絡が絶えて数ヶ月
何気なく見ていたテレビがあっさりとしたニュースを流す
ガルバディアの情勢
世界を救った“英雄”
「………作ったのか」
「僅かでも真実が混ざってれば良いってことだろ」
発表された“真実”
世界の危機を救った英雄
彼等が確かにそうであることに間違いは無い
他の国々も彼等が世界を救った事は知っていて、それ自体を否定することは出来ない
「よっぽど切羽詰まってんだろうなぁ」
のんびりとした声が耳に響く
どうにかして注目を集めなければならない
自分達が有意な存在だと認識させなければならない
なりふり構っていられない状況
「………利用されるんだろうな」
上手く利用するつもりでいるんだろうが、そう上手くはいかない
あの狭い世界を出て、彼等には無理だと理解した
ねじ曲げられた真実と
ねじ曲げられた理想
あの地で学んだ事は、狭い世界での戦いでしか役に立たない
当たり前の生活も、依頼を見極める方法も学んではいない
だから、世界の要求に応えられず
変化する世界から取り残された
きっと、この発表も上手く利用されての事
「だろうな」
何気なく漏らした言葉を肯定する声は冷たく聞こえた

 End