基本の違い


 
どんな武器でも一通り使える事
傭兵とは違う正規の軍人にとってそれは常識ということになるらしい

幾つかあるラグナの趣味(だろう)の一つに武器の収集があったらしい
屋敷の隅、初めて足を踏み入れた一角にあった目立たない扉
僅かに開いていたその扉に手をかけたのは、気まぐれ
閉じる筈の扉が、何故かより開いたのは偶然だ
開いた扉に興味をそそられて足を踏み入れたのは………勘だろうか?
階段を下りたどり着いた先で目にしたのは、様々な武器と、中央にたたずむラグナの姿
気配に気が付いたのか、振り返ったラグナが口にしたのは
「あーあ、見つかったか………」
楽しそうな、残念そうな、複雑な言葉だった

「………あんたのコレクションか?」
いつかは見つかるだろうと思っていたこの場所
中々見つからずにいて少々油断していたのか“扉が開いていた”なんて初歩的ミスで発見された
まぁ、時間の問題だろうと思っていた所だし、そのつもりではいたけどな
そう、そのつもりでいたんだが、どうもスコールの反応は、予想していたモノとは違う
ココにあるのは新旧様々な武器だ、特殊な物も、珍しい物も置いてある
こういった物が好きなら、手に取るだろうし
使う事の出来る奴なら、欲しい物の一つや二つ転がっている筈だ
そう思っていたんだが………
ラグナはスコールの様子をそっと窺う
興味深そうに覗き込んではいるが、熱心さは無い
嫌いって訳じゃないだろうけどなぁ
一つ二つ持って行かれる覚悟をしていたが、どうやらそんな気配は無い
自分の武器にしか興味は無いって奴か?
SeeD達は個々人で使用する武器は違っている
―――違っているというよりは、固定し決めてあるという方が正しい
一種の武器しか使わねぇってのは不便だと思うんだけどな
まぁ、“専用”とか“愛用”なんてのがあるのは、誰でも同じなんだけどな
親しい2人の友人達もその類だが、彼等も彼等でそれ以外の武器を所有している
どんな武器でも使える、というのは兵士としての基本
状況によって武器を使い分ける事も兵士の基本
その基本を脇に置いている
SeeDってのは不思議だよな
内心首を傾げながら、ラグナはスコールへと声をかけた

個人が実際に使用するにしては種類が多すぎる
コレクションとして並べられているにしては実用的な上に使用した形跡がある
これが、軍の武器庫にあるというなら納得も行くが
ここにある武器の数々は存在が不可解だ
敵対する相手が使う武器を研究する為だと言われれば、少しは解らなくもないが
どうやらラグナの言動からすると全て自分が使うためのものらしい
似たような物ならともかく、使う事自体に癖がある代物は馴染む迄に手間暇が掛かる
―――効率が悪い
一種の武器を多様に使えるようにした方が手間暇は掛からないはずだ
どうしても使うことが出来ないという可能性を考えるのなら、系統の似た別のものを1つ用意すればいい
無駄なことをしている
だが、ここにある武器の動きを知ることが出来るなら………
「………ここにあるモノは全部使えるのか?」
ラグナの返答は好都合なモノだった

武器を構えて対峙する
ラグナが手にしているのは滅多に目にする事の無い特殊な武器
ラグナの腕前に期待はしていない
特有の動きさえ見られればそれでいい
「んじゃあ、気がすすまねぇけど………」
ラグナの声を合図にスコールはガンブレードを振り下ろした
 

 End