法則


 
「昔はさ、部屋が大きくなれば、モノが溢れてゴチャゴチャする事なんかなくなるって思ってたんだけどな」
そんなことを呟きながらラグナが室内に散乱した荷物を掘り起こしている
「これがさ、部屋が大きくなったらなったで、それに比例して荷物も増えて行くんだよな」
それは、部屋の広さに合わせて買い続けていればそうなって当然だ
存在する筈だという品物が存在しなかったことは一度も無い
だが、その品物が、すんなりと出てきたこともほとんど無い
“とりあえず押し込めました”
ラグナが何故か楽しそうに荷物を探しているこの部屋もそんな状況で、ここ以外、屋敷の中に幾つもある普段使われていない部屋の中身はどこもこんな感じだ
時間さえあれば片付けようという意志は見える
一度片づけた所が荒れていく様子も無い
片づけられないってわけじゃないみたいなんだよね
先日、別の部屋の荷物をどかしていたエルオーネの言葉
“片付かないのは時間が無いから”
という本人の言葉はそれほど間違ってはいないかも知れない
問題は………
「お、これじゃないか?」
部屋の右側中央、積み重なった中の比較的上の方から、ラグナが目的のモノを取り出す
遠目に見える表書きは、確かに探していたモノに見える
「それで間違いない」
スコールの言葉に、ラグナの手からスコールへと渡される
「使えるかどうかはちっとわからねぇけどな」
「解っている」
品物自体が何年も前のモノだ、確実に動作するとは思ってはいない
「貰って行ってもいいのか?」
「いいぜ、今まで使わなかったらこれからも使わねぇだろうしな」
ラグナの口調からすれば、これには大して興味が無いらしい
その証拠になるのか、パッケージには開けようとした跡さえ無い
「………この部屋は何の部屋だ」
今までの状況から、ラグナが部屋毎に仕舞い込む内容を分類しているらしいコトは解っている
お陰で必要なものを勝手に探し出すのに重宝しているが、この部屋には統一性が無い
「あー、貰ったモノを置いとく場所、かなぁ」
ラグナの言葉に改めて室内の様子に目を遣れば、確かにどう考えてもラグナが買うとは思えない代物、必要の無い品が紛れ込んでいる
昔貰ったというモノを他の部屋で目にしたコトはある
「………必要の無いモノを置く場所」
スコールの言葉にラグナが視線をそらす
だからよけいに乱雑なのか?
それほど深い意味は無く、部屋の中の様子を凝視するスコールの耳に、何かごまかすようにまくし立てるラグナの声が聞こえた

「つまりおじさんは、“捨てられない人”なんだよね」
スコールとエルオーネは、“ラグナにとって”不必要なモノの部屋に居た
「だからモノがどんどん増えていくし、溢れ出ていく訳だ」
目的は、自分達が欲しいモノを発掘する事
「ほら、やっぱり最近貰ったモノが多いみたい」
エルオーネの手元を覗き込めば、エスタ製以外の品物が数多く積み上げられている
「どこかの国の手土産か?」
「だと思うな、おじさんも大統領だもんね」
権力者への挨拶がてらの贈り物はたしかに良くあることだ
「それでスコールはどうする?」
問いかけたエルオーネの手には幾つかの品物が握られている
「使えそうなものがあるか確認してみてからだな」

“いらないのなら好きにしても良いよね?”
エルオーネの言葉と共に少しずつ部屋の中から荷物が無くなっていった

 End