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訓練の基本
 
  
 
 どこの軍隊でも、入隊してすぐに渡されるのは、大量生産された支給品
 質が悪いなんてことは無いが、特別品質が良い訳じゃない
 全員が同じモノを同じように使い
 ………だからこそ実力差ってヤツが出てくる
 ま、全員が全く同じモノを使うのは、始めの数ヶ月で、その後は向き不向きによって扱う種類が違ってくるのが実情ではあるけれど………
 とりあえず問題となるのはそこじゃない
 重要なのは初めはみんな同じ武器を使って同じように訓練をするって所だ
 それこそ、向き不向き把握する為に様々な武器を使わせられ、その時その時で支給品が違っていく
 “適正”なんてヤツはやってみなければ解らない
 それが当たり前だと思っていたんだが………
年若い少年少女達が武器を手に訓練に励んでいる
 2人から5人程度の小さなグループに、一人ずつついた担当らしい教官の姿
 武器の扱い方、戦い方を熱心に指導している、が
 「おかしな光景だよなぁ?」
 「確かに違和感を感じるな」
 少人数制がおかしい訳じゃない
 教える数が少なければ少ない程、相手の特徴やクセが良く解る
 個々人に合った指導が出来るっては確かだ
 その点では反対はしない
 むしろこの方が良いかもしれないと思うんだけどな
 それでもそれをするのは、ある程度訓練が進んでからの話だ
 「傭兵ってのは、特殊なのか?」
 「さて、残念な事に“傭兵”と接する機会は少なかったのでね」
 “ここ”に所属しない、本来の意味での傭兵
 「まぁ、傭兵ってのは武器も持ち込みで参加なんだろうけどな」
 武器も装備も全て支給される軍とは違い
 傭兵は己で必要なモノを揃える必要がある
 そう考えればおかしくは無いかもしんねぇけど
 「だが、問題はそこではないな、この場合は」
 入学間もないらしい子供達がそれぞれ手にした武器の種類に応じて訓練を行っている
 基本的な武器の扱いもおぼつかない様な子供達の姿に思わずため息が零れる
 「やっぱりなんかおかしいよな」
 通りがかった学生が、おかしな顔でこちらを見ていた
 バラムガーディアンに入学した者は、始めに一通り武器の説明を受けた後、どんな武器を使いたいのか質問される
 興味を持った武器を使わせて、それから向き不向きを判断する
 興味を持った物
 好きな物
 適正のある武器が同じ筈がない
 むしろ、適正のある武器は、興味を示したものとは違うものである可能性の方が高い
 興味を持つ=カッコイイと思う武器は使いこなすのが難しい場合の方が多い
 子供だったらよけいにそうだ
 傭兵だから武器を特化するのは構わねぇが
 根本の始まりの部分がおかしいだろ
 ―――だからこそ、他の武器が使えないなんて事態になってるんだろうけどな
  
  End 
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