武器の基本


 
誰にでも扱える武器は何か?
戦いの中で一番扱い難い武器は何か?
こんな質問をぶつけたとしよう
二つ目の質問は、それこそ答えは千差万別だろう
なぜなら、それぞれによって、得意な武器と苦手な武器は違っているから
大抵は質問された者にとって、苦手な武器が扱い難い武器ってことになる
それなら、誰にでも扱える武器は?
この答えはある程度決まっている
誰にでもっていうのがポイントだ

銃声が聞こえる
音に誘われ覗き込んだ先は射撃場
「………人がいないな」
広い室内の中に居るのは僅かに3人
『ここはもっと賑わっていていいはずだがな』
互いに顔を見合わせ肩をすくめる
大抵“軍”という組織の中では
新人兵士に与えられるのは銃器類だ
引き金を引きさえすれば誰にでも扱うことができ、とりあえず戦うことができる
他の武器に手を出すのはそれからであるし
他の武器に手を出したとしても、大抵は拳銃も携帯する
最も、誰にでも撃つことはできるが、うまく使えるかどうかは解らない
拳銃を使ったことがあるからといって、全ての銃を使いこなすことができるとは限らない
だが、結局最初から最後まで世話になるのが銃ってやつだ
室内の人間を見渡す限り
ここで練習をしているのは、専用の武器として銃火器を選んだ者ばかりに見える
「専用の射撃場ってわけでもないんだろうな」
今まで様々に見てきた状況からして、ここが専用者の練習場だということは考えにくい
いつも人で賑わっているエスタとは大違いだ
エスタ兵のほとんどは、武器として銃器類を使用する
それは、基本装備の中に銃が入っているからとも言えるが、基本の段階で銃の扱い方を教え込まれるからだとも言える
『銃を扱えるということは様々な局面で有利だからな』
例えば、脅しとして使用する場合
距離の離れた敵と相対する場合
ちょっとした駆け引きとして使用する場合
武器そのものとして使わなくとも、ある程度の抑止効果が期待できる
「想定している敵が敵だからってのはあるかもしれねぇけどな」
SeeDは傭兵だが、実際の敵は“魔女”だ
『一般的な戦闘は視野に入っていないということか』
「気の長い話だけどな」
伸びと共に呟いた言葉が射撃場に驚くほど響いた

どうやらバラムガーデンでは銃の扱い方を教えられることは無いらしい
誰にでも扱うことのできる銃をわざわざ習う必要はないということらしいが………
「おかしな話だよね」
「おかげでバラムガーデンには、ちゃんとした意味で銃を扱える人がいないんだよ」
バラムガーデン出身ではない2人が溜息交じりに告げる
『それは、本末転倒だな』
バラムガーデンのSeeDってのは、戦いに関しても結構融通が利かない存在らしい
 

 End