模擬戦の基本


 
戦闘訓練の中には必ずしておかなければならない物がある
戦闘の感覚をつかむ為に必要な事
つまりは“模擬戦”ってヤツだ
ひとくくりに模擬戦なんて言っちゃいるが
その中身は千差万別
ただの手合わせから、戦場となる舞台を用意しての実践まがいまで、いろんなパターンってやつがある
軍隊に所属していない傭兵の事は知らないが、普通軍ならば、集団戦闘で行う事が多い
それは実際の戦闘に備えて、各自の実力を見るため
また、各自が戦いの雰囲気に慣れる為
ってのがあるってが、実際の所は軍全体がスムーズに機能する為に、各自の役割をきちんと把握する為に必要な作業ってやつだ
だからこそ、模擬戦とはいえ、戦闘を行う際には事前の打ち合わせ必要となり、誰がどのような立ち位置につくものなのか、前もって通達がある筈だ
………抜き打ち試験でもない限りは、な

模擬戦を始める
通りすがりにそんな言葉を耳にして、移動する奴等の後を追った
今まで目にしてきた訓練の様子から、もしかしたらとは思っちゃいた
だが、多少形は崩れていようが、どこかのセオリーには当てはまるものだと思っていた
思っていたんだけどな………
「まぁ、一種の模擬戦っていえなくもないのかもしれねぇけどなぁ」
眼下で繰り広げられる戦い
『これを模擬戦と言い切るのは無理があるがな』
想定しているらしい、敵との戦闘訓練
偽物の戦闘
確かにそこだけを見るなら、模擬戦って呼べなくも無い
「間違っちゃいねぇけど、間違ってるよなぁ?」
繰り広げられた光景は、派手に爆発する魔法と逃げまどう訓練生
集団戦闘の割に、指令系統は見受けられず
戦闘は好き勝手な自己判断で行われている
どうも、訓練と言うには異論のある光景
『一体どんな戦場を想定しているのか』
少なくともどこかの軍との戦闘を意識しているとは思えない
“敵”側らしい教師の一人が、後方から黙々と魔法を打ち込んでいる
何処からか獣の鳴き声が聞こえる
「………モンスター戦なんじゃねぇか?」
見やった視線の先で、モンスターが投入されようとしていた

どんな作業でも“集団”になれば指揮系統が必要だ
個々人が勝手にバラバラに動けば、個人の実力以外の成果は期待出来ない上に、結局は足の引っ張り合いにになる
模擬戦ってヤツにはそれを防止する意味も含まれている
一度でもそれを経験すれば、実感として認識出来る筈なんだが
「どうりで、スタンドプレーが多い筈だぜ」
『確かにその通りだが、あんたも人の事は言えないな』
「命令違反と、そもそも命令ってヤツを知らないってのはおっきな差だぜ」
傭兵として戦闘に参加するのも無理があるんじゃねーか?
戦闘時の指揮系統を知らなければ、命令を待つなんて事はするはずがない
軍の一部に組み込んだとしても、まともな戦力にはなれないのかもしれない
 

 End