息抜き


 
「………それで?」
視線が冷たく向けられる
情けないことだか、それもいつもの事
慣れてしまった視線は大した圧力にもならない
「ま、ちっとばかり息抜きってやつだな」
俺が言った事は紛れも無い事実だってのに、わざとらしいため息が聞こえた
「………ところで、こんな場所で何やってんだ?」
大して人気の無い街の人目に付かない場所
なんでここに居るのか
その答えは何となく予想は付いている
俺の言葉に、ただ黙って視線がそらされた

当然、仕事をして、様々な事が起きれば誰だって逃げ出したくなる事はある
ただ、それを実行するとなれば、それはそれで大きな問題となる
大抵のヤツは逃げ出したいって思いながらも結局は逃げる事無くそいつを片づけるんだろう
………こうやって逃げ出している俺が言うのも何だが、それが責任ってヤツ、だ
ただし、責任を果たす為には我慢が必要で、その我慢にも限界がある
ってな事になるんだけどな
つまり状況は
「我慢も限界ってヤツだな」
俺の言葉に微かな反応を示し、嫌そうに顔をしかめる
「まぁ、たまには息抜きも良いんじゃないか?」
「あんたは、息抜きばかりだけどな」
間髪入れずに返ってくる言葉に、苦笑する
別に息抜きばっかりしてるワケじゃねぇんだけどな
「必要な時は真面目に仕事してんだけどな」
向けられたのは疑いの眼差し
いや、今回だって別に俺じゃないとならない仕事じゃないし
っていうか、どっちかって言えば、俺以外のヤツに任せた方がスムーズに事が運びそうだったしな
適当な名前の付いた“会合”
各国からの参加メンバー
出席予定者を目にしただけで、“会合”がどれほどどうでも良いものなのかが如実に解る
「探しているんじゃないのか?」
「どうかな」
俺が姿を消したことは、どっちかって言えば無言の同意の上だ
居なくなったことで、困るヤツはいないし、わざわざ探しに来る奴もいない
「そっちの方が探されてるんじゃないのか?」
息抜き=逃げ出した事を否定はしていないが、この街ではいつもの友人達の姿は見かけなかった
「別に………」
探されてはいない、なのか
どうでも良い、なのか
いまいち判断に困る言葉
まぁ、探されていないって事は無いだろうからなぁ
探している奴等の理由は様々かも知れないが、俺の様に居ない方が都合が良いってことは無い
けど、まぁ
「まぁ、スコールが良いってんなら、いいけどな」
息抜きだって大事だし
なによりも―――

時間が過ぎる
何かをするわけでも無く
話さえもしない時間
随分時間が過ぎた頃、どちらからともなくその場を後にした

 End