経営の初歩


 
ガーデンの維持には金がかかる
それは分かり切っていた事
今まで得ていた収入の大半は、SeeDが争いの場へと赴く事によって得ていたもの
一時的かもしれないが、平和になったこの世界では争い事の数が極端に減った
ガーデンへの傭兵の派遣依頼も減り
ましてや、SeeDの派遣要請は激減した

「ま、そりゃ仕方ねぇんじゃねーの?」
バラムガーデンから届いた公式な連絡
「ええ、まぁその通りですが………」
回りくどい言い方をしていたが、簡単に言えば財政が苦しいので資金援助、もしくは何かの依頼をして欲しいって話だ
まぁ、今まで主に戦争やら殺伐とした事で金を儲けてきた組織だ、そういった争い事が激減したお陰で財政的に苦しくなるってのは、当然って言えば当然の話だしなぁ
それで、その件に関して、こっちがなんらかの手助けをしなきゃならねぇってのはなぁ
ちらりと見やった先で、補佐官達が笑顔で首を横に振っている
ま、当然だよな
「わざわざガーデンに依頼する様な出来事なんてのは、さすがに無いしなぁ」
もめ事争い事
自分達で解決出来ないような事件には幸いな事に出くわしちゃいない
それに、寄付って言ってもな
キスティスの様子からすれば、そっちに期待をしているみたいだが、そんな危ない事するつもりはさらさら無い
独立した組織として存在するつもりなら、寄付なんて行為はガーデンにとっても利にはならないと思うんだがな
どんな手段であれ、力を借りるのなら、しがらみが生まれる
相手が知り合いだから、といってしがらみが無くなる訳じゃないからな
「バラムガーデンは、バラムと関係してるんじゃなかったか?」
ガルバディアやトラビアの様に国内の一戦力に組み込まれている訳じゃないが、バラムガーデンも、バラムとの契約が存在するはずだ
モニターの向こう側が少し騒がしくなる
「………とりあえず、もう少し受け付ける依頼の範囲を広げてみたらどうだ?」
ため息混じりの言葉を残して、ラグナは通信を切った

キスティスの手元にはガーデンへと届けられた依頼が複数
「なんでも屋だな」
どれも、以前のガーデンならば、依頼として受けることのなかったモノ
傭兵業務では決して無く
近頃少しずつ増えていた護衛業務でも無い
最近届けられる依頼の内容は千差万別だが、大部分がSeeD以外の者でも遂行できる簡単な依頼
「でもこういったモノが増えるのは良い事じゃないかしら?」
手にした依頼は、他国への荷物の配達
「平和な証拠ではあるよな」
「こんなもんをガーデンに頼む必要がある時点で平和じゃねぇだろ」
「そそ、モンスター避けだもんねぇ」
「まったくの平和になったら、ガーデンが立ち行かなくなるわよ」
キスティスが手にしていた依頼書をそれぞれの手に押しつける
「ガーデンの維持にはお金がかかるの」
独力の組織として存在する為には、自分達の手でガーデンを運営する必要がある
平和な時代になって、傭兵としての仕事がないなら、仕事の幅を広げるだけ―――
効率は悪くても、それが一番確実な方法

 End