注意


 
長い間―――といっても数カ月だけれど
使って居なかった場所は注意が必要
まずは最後に使った時の状態
それから、そのあとに使った人がいないかどうか
もしかしたら、予測もできない事態が起こってるかもしれない
だから
「事前の確認って必要だと思うんだよね」
私の言葉に、バツが悪そうに顔を背けた

家族だし、ここがスコールの“家”だっていうのは変わらないから
事前の連絡無くスコールが帰ってくるのは別に良い
それは、問題がないんだけど、帰ってくるならもう少し頻度を多くして欲しい
部屋自体はそれなりの維持ができるけど、部屋に置いてある家財はそうそう都合の良い状態になっているとは限らない
特に冬はね
「前回使ったのが夏だったからね」
部屋自体は秋にも使った
けど、残念ながら空調は使って無かったんだよね
その前の季節は夏
切り替えをしなければ当然冷気が吹いてくる
………冷風よりも外気温のほうが低いのが幸いだけどね
ある意味これ以上冷えることは無い
けど体感温度は、たぶん寒い
実際に経験したわけじゃないからわからないけどね
暖房のすぐそばの席に温かい飲み物
毛布は………出した方がいいのかな?
本人は気がつかないようにこっそりとため息
「どう?温かくなった?」
「………ああ」
こっちを見ないままの小さな返事
こんな失敗なんて、珍しいんだろうな
珍しいんだろうけど
「でも、寒いと思わなかったの?」
いくら疲れていたとしても、冷房をつけたまま寝てたら寒いと思うんだよね
………寝具は、ちゃんと出してたみたいだけど
「昨日まで、寒い所に居たんだ」
寒いところって、トラビアの北の方、とか?
いくらなんでもそこまで寒い所で野営なんてしないと思うんだけど、しないって断言できないのよね
「そうなんだ」
追及するのも怖い気がするし、とりあえずそう答えておくしかない

「今度は気をつける」
スコールの言葉に私は勿体ぶって頷いて見せる
気をつける、よりもやっぱり事前に連絡を入れて欲しいんだけどね
そうすれば事前に準備もできるし、確認だってできるじゃない
「エスタに到着する直前でもいいから、一言連絡入れてくれると嬉しいな」
にっこりと笑って告げた言葉に、スコールが考えるような顔をする
「………できそうなら、そうする」
スコールが到着したのは夜中、らしい
確かに夜遅くに連絡をするのは気が引けるのかもしれないけど
「お願いね」
でもね、朝起きたら居るはずの無い人が居るっていうのは、心臓に悪いんだよね

それから、部屋とスコールが暖まる迄の間、残念なことにおじさんは帰って来なかった
 
 

 End