語られない行動


 
―――よし、モンスターを退治に行こう
―――皆に害を与えるモンスターをやっつけるんだ

子供向けの物語
お決まりのストーリーは
誰かの為に
皆の為に
そのために“何か”と闘うというもの
そうして様々な困難を乗り切って
やがて目的を達成して
そして誰からも認められるような“英雄”になる
そんな話
良く在る物語を目にして、本を閉じる
「そんな綺麗な話、ありえねぇけどな」
誰かの為の決意
乗りこえられる様々な困難
………
何かを行うのは、誰かの為ではない
自分が知った相手
大切な人
その人を大事に思う自分の為
困難な出来事を乗りこえたとしても
………その時はどうにか折り合いをつけたとしても、後悔は残る
物語は所詮物語だ
物語の裏側なんて描かれる事は無いし
その後の出来事なんかしったことじゃない
けれど………
「後悔するんだろうな」
裏側を考えてしまう
その後の生き方を想像してしまう
当たり前の人生を送っていたら考えなかったかもしれない事
―――普通の生き方をしていたなら、居ることも無かった場所

こんな日に思い出すのは、ずっと昔
運命のあの日のこと
あの日、あの時
違う行動を取っていれば、“今”とは違う人生を送っていたかもしれなかった
繰り返される後悔
あの日のことは何度も考える

手元から、本が滑り落ちる
子供向けのたわいもない話
何処にでもある様な“英雄”の物語
脇から伸びた手が、本を拾い上げる
「………ただのおとぎ話だ」
中身を察したらしい声が嫌そうに呟いた

 End