捜し物


 
ソファに腰掛け、紙をめくる
ふと思いついてメモを取る
破り取った紙をポケットに仕舞いペンを置く
再び手に取り、紙をめくる
遠くから聞こえる微かな音
そんな時間がしばらく続いて
遠くから呼ぶ声に返事をして
書類を手にしたまま部屋を出た

「とりあえずは書斎だろ、それから………」
今日一日の行動を思い出す様に記憶を探る
うろうろと室内を歩きながら、その辺りに手を伸ばし
積み上げられた何かを崩し、取り分ける
「この辺に置いたと思ったんだけどな」
書類を手に書斎を出て
ここに入った時は確実に手に持っていた、って思う
少し話をして
「どっかその辺りに置いたと思ったんだよな」
その時、だと思う際の自分の行動をなぞって見るが、どうも良く解らない
「話してる時は、手に持っていたのは確かなんだよね」
そう呟きながらエルオーネがソファの下を覗き込む
「問題はそこから先なんだよな」
答えながらさっき取り崩したばかりの山にもう一度手を掛ける
無言で探す時間が少し
「一緒に持って行ったんじゃないの?」
「………もしかしたらそうかもな」
その辺に置いてから、荷物を手に取った気がするが、ま、それも気がするってだけだ
考え込みながら、ラグナはドアへと手を掛ける
「ちっと、向こうも見て来るか」
「行ってらっしゃい」
ソファに座り込んだエルオーネが手を振る
………手伝ってくれると嬉しいんだけどな
ま、仕方ねーか

「………諦めるか」
面倒だけどな
なくなったからといって取り返しが付かなくなる訳じゃない
時間はイヤになるほど過ぎた
「見つからないもんは仕方ないよな」
見つける努力は充分したしな
「それでいいならいいんじゃない?」
エルオーネが疲れた様な声で同意する
見つからないものは見つからないんだよな、だからまぁ
「ま、どうにかなるだろ」
やっぱり、面倒だけどな

それから数日後
部屋の片隅から書類が見つかる
 

 End