挫折


 
巧妙な細工の施された軍船が旅立っていく
遠ざかる船影に
何かが始まる予感
ラグナは、長い間、遠ざかる船を見つめていた

「足取りが掴めないな」
現れては消える船
数ヶ月に一度、港に寄港する以外に、船の足取りは不思議と掴めない
港に現れる周期さえも不明
船の中の会議室で、スコールは主立った人々と共に、地図を囲んでいた
地図の上に示された印
「……関連性が無いな」
港に現れる順番も、その時期さえも全く一貫性が無い
むしろ………
「まるで、何かから逃げ回っている様な動きだ」
小さくつぶやいたスコールの言葉に反対の言葉はあがらない
「ああ、俺にもそんな風に見える、な」
控えめな肯定の言葉
「それと……どっかに基地がある様な動きだな」
謎の船が立ち寄った先々で情報を集めた結果、判明した事柄は
出航した方向と、次に寄港した方角の違い
そして、購入した積み荷の量と次に寄港し、必要物質を積み込む間での時間の差
何より、購入するのみの船の資金源……
示される手がかりは、この船がただの船では無い事を物語っている
だが、重要な事は何一つ解っていない
むしろ、捜査の手を伸ばせば伸ばすほど謎は深まっていく
「最近妙な動きをしてるって言えば、ガルバディアなんだが……」
席上に沈黙が訪れる
待ち伏せした海上を見事な程避けて通る動き
アレが偶然のモノでは無いならば、その情報力はガルバディア軍のモノであると思うのが一番しっくり来る
だが…………
ガルバディア軍が必死になって行っているのは、情報戦よりも軍事力の強化
スコールは、情報を思い浮かべる
「……違いますね」
「そうだな、ガルバディアならもっと強気だろう」
軍事力を楯に強引に事を進めようとする姿は、あの船の様子とそぐわない
「どっちにしろ、これ以上探ったところで、そう簡単に船は出てこないだろうが…………」
視線が、スコールの元へと集まる
「どうする?」
現れないなら、これ以上の探索は無意味だ、けれど……
「根拠は?」
船が出没しなくなるという保証は、無いはず
「追われていることに気づいたから」
追われている事に?
与えられたヒントを元に、ゆっくりと考えを巡らす
――前回謎の船が寄港した港は、捜索を始めてから一度船が寄港した箇所
もし、船が何者かに追われているならば
――港で働く者が、後を追う船の存在を話題にした可能性はある
そして、何者かが追ってくる事に気がついたならば
確かに姿を隠すだろう
「一度、帰国しよう」
スコールは、言葉を噛みしめるようゆっくりと言った

エスタの大地が徐々に近づいてくる
何の手がかりも掴めず帰還することに落ち込んでいたはずなのに
遠く見える大地に、不思議と安堵感を覚える
『はじめから上手く行くなんて事はまれだ、まだ、今は次がある』
帰還することを決めたその夜、囁かれた言葉
それでも…………
スコールは、強い意志の宿った眼で、じっと前を見つめていた
 
 
 

END