協力


 
突如、目の前に現れた軍用車
反射的に武器を構える
とっさに思い浮かんだ事は
コイツを奪い取れば、移動が楽になるという事
俺の考えを読んだのか、キスティスがこちらに視線を投げかける
攻撃を仕掛けようと一歩足踏み出したその時、狙い澄ましたかの様にドアが開き、人が滑り降りてきた

武器を構える彼等の目の前でキロスが車を降りた
強化され、中の様子が見えない様に遮られた特殊ガラス
『もしもの為の保険、といったところだ』
スコールは言われた通り、車の中で座ったまま待機している
彼等の緊迫した雰囲気が伝わってくる
各自の武器に込められる力
彼等の様子を気に止める事無く、キロスが口を開いた
辺りに気を配り、潜められた声はスコールの元へは聞こえてこない
判るのは、キロスの言葉に対する彼等の反応
勿論先に打ち合わせた内容のお陰で、話の流れがどの方向に行くのかは判っている
彼等の顔色が変わる
『いち早くこの地から脱出したいのは彼等の方だろう』
『申し出自体は悪い取引じゃないはずだ』
自信たっぷりに言い切ったキロスの表情を思い出す
驚愕、怒り、不安
めまぐるしく変わる表情
この車両を借り受けた時と同様に巧みに言葉を操り説得をしているのだろう
やがて
彼等が構えていた武器を収める
ゆっくりと、警戒しながら車へと近づいてくる
慎重に伸ばされる手
そして、ドアが開いた

定員オーバーの狭い車内
緊張したまま、俺たちは後部座席に陣取っている
「方向はこちらで間違いないのかな?」
ハンドルを握った男―――キロスと名乗ったが、本名かどうか判ったもんじゃない―――が誰にともなく問いかける
息を詰めた様な沈黙
「地図を見る限りは合っていると思う」
俺たちの誰一人として返答をしなかったからか
助手席に座ったガキが膝の上に広げた地図に視線を落とし、呟く様に答えた
「なら、このまま行く事にしよう」
男には殺気を含んだ気配に動じる様子が無い
ただの素人だって、ここまであらかさまな殺気には敏感に反応する筈だ
『元ガルバディア兵』
先ほどの名乗り通り、兵士だったというならば尚更殺気に気付かない筈がない
この状況で平然としていられるというのは、ただ者じゃない
ま、頼りないのがいるが複数のSeeDを相手に出来る訳はないからな
何か不自然な動きを見せたならばすぐに反撃出来る様、武器に掛けた手を離さないまま、二人の様子を伺う
ガルバディアガーデンまでの長い道のり
不気味な静けさ共に、車は進んで行った
 
 

 To be continued
 
Next