事実と隠し事


 
「そうね、納得出来る答えが欲しいわ」
ここから先は駆け引き
どこまで、手の内を明かすか………
話す事は全て真実
ただ、真実の中に隠し事を潜ませるだけ
例えば、自分がどこの国の人間なのか
例えば、自分の職業とか……
『エスタ』という国を隠す事が最優先事項
………後は?
「まずは、貴方の名前から教えて欲しいわね」
外に出ていた3人が戻った事を確認し、車がゆっくりと動き出す
「スコール・レウァール」
視界に映るバックミラーの中で、サイファーが眉を寄せた
その瞬間、上手い手が見つかった

手を貸すのはここまで、と決めた訳では無いが
こういった場面をどうやって乗り切るか、それも経験というものではないかな?
伝え聞いただけの知識と、実際に行った経験では、雲泥の差が現れる
そこを考えれば、スキルアップにはうってつけの機会
………という事にしておくとしよう
後日、このことを知ったら、スコールの居ないところで騒ぐだろうラグナへの言い訳を頭の中でシミュレーションしながら、キロスはスコールの様子を暖かく見守っていた
ラグナ対策とし、考えた言い訳も嘘という訳ではない
これから先の事を考えて、こういった経験も必要だろう
そして、今、彼等相手ならば、もし失敗したとしても、差し迫った危険が訪れる訳ではない
ガルバディアガーデンの状態を見る機会が無くなる
それはそれで痛手だが、ガルバディア軍と関連がある事が分かり切ったこの施設は、今回必要なデータを調べるには不向きだ
最も、今後必要となる可能性は充分にあるのだが……
それはそれでその時にどうにかなるだろう
キロスはことさらゆっくりと、車を走らせた

スコール、コイツの名前がどこか引っかかる
聞き覚えがある様な、そしてどこか知っている様な気がする
俺がそう思っているのをまるで知っているかの様に、鏡の中でスコールが笑みを零す
「それで、“ただの旅行者”なのが気に入らない?」
耳障りなのは、口調が楽しげだからだ
睨み付ける視線を、平然と交わす仕草も気にいらねぇ
こんな奴がただの一般人だなんて、信じる馬鹿が居たら見てみたいもんだ
「昔、バラムガーデンに居た、と言ったら納得するか?」
………………なんだと?
相変わらず楽しそうなスコールの表情だが、どういう訳か嘘では無い事だけは判った

「そんな冗談に引っかかるかよっ」
スコールの言葉に反応を示したのはゼルのみ
セルフィとキスティスは目を見張り、サイファーは、彼は何かを思い出そうとする様な反応を見せた
「事実だ」
スコールはサイファーの反応を伺いながら言葉を重ねる
「子供の頃の事だが……」
呼吸を置き、じっくり各自の反応を伺い
「そんなの判る訳…」
「サイファーの事は覚えている」
否定の声をかき消すように言葉を続けた
 

 To be continued
 
Next