過去


 
「ごめんね……」
ベッドに横たわり、私は誰かに謝る
……誰か、それは関係ないのに、知ってるからという事だけで巻き込もうとした彼等だったのかもしれないし
それとも、もしかしたら………
私の意識が眠りへと導かれる
ここには、スコールもいないの
そして、眠りとは違う不思議な感覚
私は、あの子と一緒に、レインと一緒に、帰らなきゃならないから
それは遠い過去へと続く道案内
私を過去へ連れて行って!

どこか遠い場所から声が聞こえる
懐かしい声
大好きな人の声
ラグナおじさん?
意識を向けた先、鮮やかにその姿が見えた
初めて見た時と同じ服装
ガルバディアの兵士服
そうだね、おじさん、兵士だったんだよね
「なあ、俺達戦争に来たんだよな」
からかうような声が聞こえる
ウォードおじさんの声、初めて聞いた
私の目に映るおじさんは………、おじさん達は相変わらずで、文句を言ったり、言い訳をしたり、楽しそうにしている
相変わらず……
違うよね、相変わらずなんじゃない
これがあの時よりも前だから
見ている内に、昔の記憶が次々と浮かび上がってくる
大好きだった人達
大好きだった時間
思い出に浸っていた私の耳に、賑やかな声が聞こえる
……どこ?
誰かを通して感じるアルコールの匂い
見た事のない場所、知らない場所
高級そうなバー
着飾った綺麗な女性
耳に聞こえる優しいピアノ
私の知らないおじさんが居る
こんなの知らない
レインの方が美人だし、レインのお店の方が……
緊張して足を吊るところなんて、おじさんそのものなのに
これはレインに会う前の出来事だって判っているのに、どこか裏切られたような気になる
……今はまだレインとも私とも会っていないから
今日はもう良いよ……
私はそっと、意識を逸らす
眼の前に座る女性と親しげに話すその姿を、これ以上見ていたくは無いから
早く、目覚めないと……
上手く行かない切断の間、夢を幸せそうに語る2人が見えた

意識が浮上する
眼を開いた先には無機質な天井
エルオーネは重く疲れ切った身体を強引に起こす
「……ごめんなさい」
勝手に過去を覗いて
「ごめんね……」
もう少し先の過去へ
そして、きっと今度は助けてみせるから
「だから……」
もう少しだけ、協力してね
 

 To be continued
 
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