協力者


 
通路の片隅で、スコールは数人のムンバに囲まれていた
黒い瞳がまっすぐに見つめてくる
語りかける言葉に反応して、動く身体
スコールとは違う名前を呼び、次にスコール自身の名前を呼んで
彼等は、始めて会った筈のスコールを友好的に迎えた
『ムンバはなぁ、すごいんだぜー』
昔、彼等に紹介された時の言葉
それほど身長の変わらない彼等とドキドキしながら、話をした事を思い出す
『俺達は、言葉がわかんねえけどよ、向こうはこっちが言う事解ってるんだからな、ムンバの方がよっぽど頭良いぜ』
そう言って、笑い合っていた
彼等は、父の大切な友人で、恩人
「…………お願い出来ますか?」
自然に口調が改まる
スコールの言葉を受け、任せておけとでも言うように胸を叩き、ムンバ達が一斉に動き出す
頼んだのは、自分達の脱出の手助け
3機のアームの操作
兵士達に気付かれれば、きっと只では済まない
彼等にアームの操作を頼んだという事は、彼等はこの場に留まらなければならない
共に逃げる事が出来なければ
たとえ一時的であったとしても、犠牲になれと言っているも同然
何一つ隠すことなく話したスコールの言葉は、彼等は正確に理解しているはずで、つまりは全てを承知して協力してくれると言う事だ
「有り難うございます」
自然に頭が下がり、礼を述べたスコールの腕にムンバがそっとなだめる様に優しく触れた

「一度浮上した後すぐさま潜行する、多分そのころには騒ぎはもっと酷くなっていると思う」
スコールは傍らを歩くムンバへと、予測出来る範囲の事を話す
そして、彼等に一番肝心な事
「潜って来た後は、最上階の出入り口が自由に行き来出来るようになっている筈だから………」
ムンバ達の脱出の手引き
「この建物から北の方に少し行った所で待ってます」
SeeD達の脱出先は南
もし、彼等がSeeD達が上手く追っ手を封じる事が出来なかったとしても、反対方向であれば兵士達がムンバに気付く事は無い
スコールの目の前で、アームの入り口が開く
まるで安心して任せろとでも言うようにムンバがスコールの背中を叩く
軋んだ音を立てて扉が閉じる
隙間からムンバが両手を上げて合図を送る
最下層へ向かってアームが動き出した

動く3機のアームの中で、それぞれ武器の用意をする
非常時に動いてるコレに目を留める兵士がいないとは思えない
気がついたならば、きっと不審に思うはずだ
ムンバ達には、すぐに制御室から逃げる様に言っているから安心だが
その分、いつ止められるか解らない
止められる事が無かったしても、攻撃を受けないという保証は無い
だからこそ、油断を誘うように、ごまかしが利くように、念入りに姿を固め顔を隠す
その上で抜き身の武器を構える
警報が鳴り響き、命令が下った今、武器を持つ事は不自然では無い
音を立てて、階下へ降りていく
スコールの通信機に、二人から最下層へと辿り着いた知らせが届く
完全に浮上する迄後少し
扉を開けても支障が無い時間はそれほど長くない
残り数階を残しアームの動きが変わった
「先に脱出して下さい」
自分でも不思議に思う程冷静な声が告げる
残り3階ほどを残し、動きを止めたアームの扉を切り裂いて、外へと飛び出した
 

 To be continued
 
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