浮上


 
一瞬の内に辺りを襲った強い衝撃
運ばれた先で、強い光に視界が覆われる直前、眼の前に映し出された物体
―――冗談じゃねえ
脳裏を過ぎったのは悪態の言葉
至近距離に着弾したミサイルの衝撃にガーデンが揺れる
「くそっ」
やけくそで手が適当に機械を操作する
ガーデン全体を光が覆う
次々と飛んでくるミサイルの姿
突然強いGがかかる
不意の衝撃に体が後方へと投げ出される
着弾したミサイルの爆発音とは違う、地鳴りの様な音が聞こえる
そして、金属が立てる悲鳴のような音
錆び付いた機械が立てる軋んだ悲鳴
ミサイルの爆発による火花と煙幕と、大量に吹き上がった土煙が視界を覆っている
ミサイルは当たらなかったみたいだな
基地に乗り込んだ奴等がどうにかしたってところか
うっすらと滲んだ汗をこっそり拭い去る
突然眼の前を遮っていた障害物が消え去る
「動いてる!?」
……あ?
大きく開けた前方の窓ガラスにへばりつくよう立つゼルの姿
その向こうに、広々とした空と海
「なるほど、こういう事ですか……」
気が抜けた様なシドの声
ゆっくりとした速度で次第に辺りの光景が移り変わっていく
こいつ、乗り物だったのか
「サイファー?」
気分が高揚してくる
久しぶりにわくわくした感覚がこみ上げてくる
「動くんだったら、操縦が出来る筈だよな?」
好きな所へ動かす事の出来ない乗り物なんてのは無い筈だ
サイファーは目の前にある機械の数々を興味深く覗き込む
「サイファー、あなた達には学園内の状態を見てきて欲しいのですが……」
「ああ、何が起きたか解らずにいるだろうしな」
シドの言葉も正論だが、ここは素直に従う訳にはいかねえ
「そいつはお前に任せるぜ」
サイファーは機械類に興味を向けたまま、あっさりと返事をする
「サイファーはどうすんだよ」
「俺はこいつの操縦方法を確認すんだよ」
方向転換も出来ないようじゃ、直にどうしようも無くなるだろうが
「……サイファー……」
「あんたは黙ってな、どうせ何も出来ないんだろうが」
尚も何事かを言いかけたシドを黙らせる
「ゼル、先行」
風神の声に慌てた様にゼルが動き出す
「………しかたありませんね」
負け惜しみの様な声が、室内に響いた
 
 
 To be continued
 
Next