彼等


 
長い睨み合いと駆け引きの末、陥落したのは学園長の方
ようやく問題の人物の事を聞き出す事はできたけれど
「彼等から話を聞いたのは初めの一度だけです」
それもほんの表面だけ
暫くの間の滞在許可と職にあぶれたので何か無いだろうかという言葉
もちろん、その言葉の真意や目的を聞き出す為のやり取りが行われる筈だったらしいのだけれど
「丁度、ガルバディアの放送が飛び込んで来たんです」
ため息と共に告げられた言葉は、ようやく偽りが無い様だけれど……
「その後は、方針決定やら、対応やらに追われまして、正直彼等の存在を忘れていたんですよ」
偶然のタイミングと決定的なミス
学園長の言葉にサイファーが、何事かを吐き捨てる
聞こえなかった言葉は、聞こえなくても想像する事は出来るけれど………
学園長の話の中で、1つ気になる箇所がある
大した事は無いのかも知れないけれど
何か重大な意味があるのかも知れない言葉……
「今、彼等って言いました?」
卒業生だと言う男が居た事
その男が突如姿を消したと言う事
彼女が―――エルオーネが居なくなった事と関係があるかもしれないという事
私達が知っているのは一人の男が居たという事実と彼が疑わしいという憶測
「ええ勿論です、あの二人は一緒に面会を求めてきましたから……」
――二人
学園長の言葉に顔を強張らせた私達に気が付いたのか、言葉は半ばで止まり、伺うような視線が投げかけられる
「もう一人居たって訳か……」
「誰もそんな事言わなかったぜ!」
ガーデンは広いなんて言っても1つの建物、誰の目にも触れずにいるなんて事は、部屋の中に閉じこもってでもいない限りは不可能
「……まさか、客室に籠もりっぱなし?」
そう、その可能性もある、なんて言いたいけれど
「無理」
「いる事は出来ても、人がいる事は解るな」
そう、誰かの存在は人の動きで察する事が出来るし、何よりも
「食事が必要になるのよ」
不思議そうな顔をしたゼル達へと答えを示す
ガーデン内では各部屋に調理設備はついていない
誰かがそこに存在しているならば、どこかから食料を持ち込まなければならない
「元から用意してたなんていうのなら意味はねえけどな」
その可能性も否定は出来ない
けれど
学園内を許される限り自由に動き周り、生徒や教師の一部をつかまえ、雑談を交わす……
目撃された彼の行動を考えるとそれは無い気がする
「誰も知らないとなれば、いなかったのかもしれませんね」
「あんたが居るって言ったんだろっ」
緊迫感に欠けた声にすぐさまゼルが反応する
「違いますよ、私と面会してからさほど時間を置かずに居なくなったと言っているんです」
滞在時間が極端に短ければ、人目に触れる機会も少なくなる
そして、印象に残る様な事が無ければ……それ以上に強い印象が与えられたとしたならば、きっと人の記憶に残る確率はぐんと少なくなる
「可能性はあるわ」
でも、その時期が何時で、何の理由があったのかは解らない
「事実を確認したいのなら、ゲートに行ってみると良いですよ」
難しい顔をして考えこんだ私達へ、再び学園長が言葉を掛ける
「ええ、彼なら覚えている可能性が高いですよ」
彼等が学園卒業者だって事も覚えていた位ですから……
学園長の言葉を聞き終える前に、私達は行動を起こしていた

「何か気になる事でもあるのかい?」
ゲートを目指し駆け出した人々の背中を見ながら、アーヴァインは雷神へと近づく
彼は話の途中から何かを考えこんでいた
そして、幾度か何かを言いたそうだった
……僕と同じに、ね
「少し気になる事があるもんよ……」
暫く躊躇った後、彼は躊躇いがちにそう言った
 

 To be continued
 
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