防衛戦


 
武器と特殊設備を手に乗り込んで来るガルバディア兵の姿
戦闘慣れした兵士達は、躊躇う事無く武器を手に振るう
戦闘訓練を受けているとは言え、小さな子供達や、実戦経験の少ないバラムガーデンの生徒達では、正面きって戦うのは不利
だからと言って降伏する訳にはいかない
警告も宣告も無く乗り込んで来る兵士達の姿
乗り込んで来る兵士達の大部分が、自らの意思を無くしたように、ただ無言で武器を翳す
退避命令と、戦闘命令
幾人か呼び出される人名と、指揮を執る人間の指名
混乱の中入り乱れる放送に、時折立ち止まり、耳を傾ける
命じられた命令は防御
地の利を活かした戦闘方法
幾人ものグループを組み、それぞれが補い合いながら戦う作戦
開きっぱなしの回線からは、各地の状況を報告する声
そして、様々な事柄を元に下される的確な判断
戦闘を指揮する声の中からは、学園長の声は聞こえない
全ての指示は僅か数人のSeeD達の手によって下されている
すれ違う子供達に声を掛け、判断を仰ぐ生徒達に答えを与え、シュウは戦闘地帯へと急ぐ
大部分の生徒、SeeD達には知らされる事の無い学園長の事情、ガーデンの存在意義
暴かれた真実と、数々のやり取りの末、現在ガーデンの指揮権は彼等の元に移動している
だから、学園長の声が聞こえないのは当然なのかもしれない
けれど………
予測していなかった戦闘
戦うべきでは無い子供達が巻き込まれているという事実
宣言された訳では無い立場
聞こえてくる放送に、時折不安げに耳を傾ける生徒姿が見える
SeeDなんて言っても同年代
つい最近まで一緒に授業を受けてた同級生
あの現場に居た者以外は、何が起きているのは、誰一人として理解している者はいない
様々な事を考えれば、責任者である学園長が姿を現さないのは致命的
バラムガーデンを狙うのは魔女の理由だとしても、何故狙われるのか、誰一人知らないとしても、何らかの説明を欲している
今はまだ、目の前の敵を倒すことに懸命になっているけれど………
………まずいわね
近い将来に思いを馳せながら、シュウは乱戦の最中へと駆け込んで行った

今はまだ持ちこたえているが、このままではそう長くは持たない
戦闘に参加できる人数の差
武器弾薬、様々な装備の差
戦闘に対する意識の差
防戦に徹する事によって、どうにか保たれている均衡
ガルバディア兵士に下された命令は“ガーデン内の全ての人間の排除”
魔女の支配下にある大多数の兵士は、命令を躊躇う事無く実行しようとしている
このままの状態で戦闘が長引けば、遠からず敗北する
先に、魔女倒すしかねぇな
「ガルバディアガーデンに乗り込むぞ」
魔女を倒せるかどうか、考えている暇も議論する暇も無い
「そうね、そうするしか無いわね」
サイファーの言葉に、一瞬場の空気が凍り付いた
躊躇うような沈黙と、緊張に喉を鳴らす音が聞こえ
力の無いキスティスの言葉に続けて、躊躇いを含んだ同意が返った

戦いの中で稀に生じる休止
今このとき、戦闘を続ける場所は勿論あるのだろうけれど
相手の出方を窺う様に、双方が手を止める瞬間が在る
―――バラムーガーデン正門前
場所柄、戦闘の激しいこの場所で生じたその瞬間に、まるでタイミングを図ったかのように、1本の放送が流れた
ガーデンとSeeDの存在意義
突然始まった戦闘への励まし
そして、これから行う行動への支援
いつもと変わらない声、いつもと変わらない調子
あまりにもいつも通りの彼等の様子は、危険なはずのこれからが全く大したことが無い様に感じてしまう
上手いわね
重大な任務の前に余計な気負いを無くすのは指揮官の大切な仕事
意図した事では無いのかもしけないけれど、微かに聞こえるいつものやり取りに笑みがこぼれる
「後のことは任せたぜ」
僅かな時間を置いて、放送が切れる直前に聞こえた言葉
始めて聞いたその言葉に、戦いを続けていた私達の間から、気合いの入った声が上がった

ガルバディアガーデンに乗り込むのは、少数精鋭
………まぁ、精鋭と呼ぶには不安な奴も居るが、面倒な背後関係を考慮すればコレがベストって事だ
これから俺達が乗り込む事は、ガルバディア兵士の耳にも入った
奴等に準備する時間を与える訳にはいかねぇ
行動は迅速に、だ
ガンブレードを手に、互いのガーデンの距離を測る
乗り込む先に、ガルバディア兵の姿
「よし行くぞ」
地面を蹴ったサイファーの背後で、アーヴァインが撃つライフルの音が聞こえた
 
 

 To be continued
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