戦場へ


 
良く知った建物の中
見たことも無い兵士の姿
好きではなかったけれど、毎日の様に生活していたその場所が見知らぬ場所へと姿を変えた
救いなのは、知り合いの姿が無いことかな?
今共に戦っている友人達の事はそりゃ大事だけれど
別れてから再び出逢うまでの時間が存在していて
その生活の間にちゃんと家があって、友人がいる
「次、どこに行けば良いんだ!?」
それなりに入り組んだ通路で、足を止めてゼルが問う
「何処って言われてもねぇ〜」
ゼルの声に我に返りながら、
どうしようも無い考えに捕らわれて居たことが気付かれないように
アーヴァインはわざとのんびりした言葉を返す
「ガーデンのことは良く知ってるけど、魔女イデアが何処にいるのかは知らないよ〜」
“魔女イデア”
口にした言葉に小さく心が痛む
戦わなければいけない敵で、今まさに戦いを挑もうとしている相手
解っていても心のどこかが主張している
―――戦いたくないって
「…………そうだな、何処が目的地なのかなんて知らねえよな」
微かに曇ったゼルの顔
なんでも無い事の様に続けられた言葉は何処か弱々しい
戦う事に対して何処か納得出来ない気持ちも、すっきりとしない感情も
多分みんな一緒
「とりあえず中心部を目指しましょう」
「簡単に攻め込まれない位置がセオリーだしねぇ」
毎日通った建物内
見かけたこともない妙な仕掛けが所々に見えるけれど
どれもそう大したことじゃない
時折現れるモンスターやガルバディア兵を退けてアーヴァイン達はガーデン内部へ
大講堂へと向かった

武器を構え、周りに散ったナカマ達と視線を交わす
声にならない合図
適切な言葉が思い浮かばないから、言葉はかけねぇ
言葉じゃない言葉を受け取った彼奴等がそれぞれ勝手に適当な意味に変換して、肯定の合図をよこす
まぁ、彼奴等も言葉を発した訳じゃねぇ
“肯定”ってのも俺の勝手な解釈
ま、此処まで来て、立ち止まる訳にも
無かったことにして引き返す訳にもいかねぇ
そうなればやることはただ一つ
それぞれが武器を構えたことを確認し、サイファーは勢いよく扉を開け放った

始めて見る建物
始めて入る建物
中に放たれたモンスターの群れ
その中で偶然出会った兵士
以前会ったことのあるその兵士は、私を引きずるようにして魔女の元へと連れて行った

「よく此処まで来た」
頭上から響いた冷たい声
見上げた講義席へゆっくりと“魔女”が姿を現す
「お前が、伝説のSeeDなのか?」
舐め回すような視線、突き刺さるような悪意
悪意の籠もった言葉が“魔女”の口から次々と零れ落ちる
「………ママ先生なの?」
微かに聞こえた言葉
「SeeDなぞ消えてしまえ!!」
「ママ先生じゃないよっ!!」
重なった声を最後に、戦いが始まった
 
 

To be continued


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