月の涙3



 
衝撃が襲う
地上へと向かう小さなシャトルの中
不連続な衝撃を身体が感じ取る
動かない様にと固定された身体が、あちこちへと傾く
振り回される身体が引き攣れ感じる痛み
窓の無い空間は宇宙の様子が見えない
さっきから襲ってくるこ衝撃が通常のモノなのか月の涙のせいなのか、判断する事も出来ない
狭い空間の中で無言の時間が流れていく
誰も話さない
誰も話せない
時折襲ってくる強い衝撃の中では
言葉を発するだけの余裕が無い
聞きたいこと、話したいこと、確かめたいこと
言えない言葉は不安となって、時間が過ぎていく
話す事で軽くなる筈の不安は、内に溜まったまま重く濁る
たぶん大丈夫
きっと大丈夫
絶対、大丈夫
何度も繰り返す言葉
衝撃に耐えながら、見渡した小さな部屋の中
守るべき家族が気を失っていた

話し合いの最中、まるで邪魔するかの様に起きたガルバディアの襲撃
室外へと退去していた筈の役人達が何処からともなく集まってきて、お陰で俺達の話は打ち切られた
交渉相手だった男達を中心に飛び交う言葉の数々
俺達の存在は忘れられたのか、大した事じゃないと甘く見られているのか、それともそんな事まで構っている場合じゃないのか………
退室を迫られる事もなく、同じ部屋の中で、全てのやり取りを耳にしている
お陰で何が起きているのか―――何が起きようとしているのか
何もかもが耳に入ってくる
ガルバディアの攻撃
魔女が居なくなった筈のガルバディアが、仕掛けて来た的確過ぎる攻撃
つい先日まで、―――少なくとも魔女が現れる前までは―――ガルバディアではエスタは滅んだ、そう信じられていた
証拠も何も無しに意見を翻し、自分達にとって歓迎出来ない情報を直ぐに信じる事はまず無理だ
つまりこれは
「未来の魔女の仕業って事?」
そういう事だ
ママ先生の中から居なくなっても、未来の魔女はこうして現れる
―――魔女はエルオーネを狙っています
目の前で繰り広げられる、慌ただしいエスタの動き
ママ先生の言葉から考えればガルバディア兵が現れたのはエルオーネを狙っての事
彼等が言うように、ここにエルオーネが居ないなら良いがそれは嘘かも知れねぇ
真実を全て語るべきか
それとも………
あの2人が信頼出来る人物かどうか、判断は付いてねぇ
だが見極めるだけの時間が残されてるとも思えねぇ
どうする?
自問する俺に、まるで気付きでもしたかの様に、近づく姿が見えた

「当国はガルバディアの襲撃を受けている。其処で、君達に協力要請したい」
告げられた言葉が頭の中を通過する
…………え?
「受けて貰いたい」 
何を言われたのか、直ぐに理解することが出来ない私達に言い聞かせる様にしてもう一度告げられる言葉
「君達はSeeDだろう、これから現れるモンスターとガルバディア兵の手から人々を守って貰いたい」
戸惑う私達へと、噛んで含む様に告げられる言葉の数々
………どうするの?
自然に私達はサイファーへと視線を集めて、その決定を待っている
「受けても良いが1つ条件がある」
「条件?」
「エルオーネの安全を最優先にする事だ」
サイファーの言葉に彼は不思議な笑みを浮かべた
 

 To be continued


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