意識



 
ずっと意識はあった
傍に居る人の声が聞こえて、辺りの様子が感じられた
ただ声が出ない、体が動かない
私の周りで色んな人が勝手な事を言っていく
納得できない事を言われて、どんなに抗議しても伝わらない、誰にも聞こえない
苛立っても感情をぶつけられなくて、余計に苛立って
そんな事を何度も繰り返した数日
ようやく私はすぐ側にある1つの存在に気付いた
「何よあなた」
薄気味悪い不気味な存在
姿は見えないのに、いつも気配を感じる
どうしても恐怖に震える不気味な存在
「いったい何よ、だれなの!?」
時折発した声に返ってきたのは薄気味悪い笑い声
そんな事を幾度か繰り返して、ようやく解った
何故この不気味な存在がこんなに近くに居るのか
私の身体は乗っ取られている
魔女イデアが語った未来の魔女という存在に
だから声も出せないし体も動かない
「出て行ってよ!この体はわたしの体なんだから、出て行って!」
出来るのは、私の身体に当たり前の様に居座っている魔女に抗議する事だけ
それだって、未来の魔女にはほんの少しも効果がない
意識のある私には色んな話が聞こえて、意識の無いふりをした“魔女”の前で様々な事柄が話された
聞こえてくる話の中で時折“魔女”が楽しそうに笑う
“エルオーネ”という名前を聞いたとき、私を連れて“エスタ”へ行くと知った時
楽しそうな魔女の声には、ぞっとする程の悪意を感じる
エスタには行っちゃいけない
“魔女”の目的が何かは解らない
“魔女”が何を考えているのか感じる事は出来ない
けれど、魔女の様子からそのことだけは理解できた
理解は出来たけれど、伝える相手が居ない
誰1人として私の声が聞こえないじゃない!
恐怖から逃げる為に私は苛立ちと怒りに身を任せて………
そうして、エスタへと辿り着いた

“魔女”の笑い声が聞こえる
頭の中で幾つも幾つも反響して聞こえる笑い声
耳鳴りがするようで頭が痛い
意識が朦朧としてくる
何かふわふわとした感触
幕が掛かったような視界の中で床へと倒れた人の姿が見える
耳の近くで聞こえた大きな雑音
右腕に感じた微かな衝撃
おぼつかない視界の中で、正面に立ちふさがる男の姿
何かを言っているけれど、聞こえない
彼の身体を魔法が貫いていく
そして………
気が付けば荒野で空を見ていた

 To be continued


Next