帰還4



 
あちらこちらに、今まで目にしたことも無いモンスターの姿が見える
圧倒的な数と凶悪な姿
月の涙の現象で現れたモンスターの数々
軍本部へと急ぐ車の中から時折見かけるエスタ兵の姿
銃器類が立てる爆音が聞こえる
時折見られる戦闘の様子
遠く見える相手は、モンスター達
現在地がエスタシティから遠く離れた場所だからかもしれないが、伝えられていたガルバディア兵の姿は見えない
―――ガルバディア軍が撤退を始めました
不意に通信が飛び込んで来る
―――攻撃に転じますか?
続けざまに聞こえるのは興奮したような声
今にも動き出しそうな気配
『その場で待機だっ』
ウォードが通信機を強く叩くのととほぼ同時に、聞き慣れた複数の声が似たような言葉を叫んだ

軍司令本部の重い扉が開く
慌ただしい兵士達の声が聞こえる
時折見かける見知った顔、友人の姿に身体の強張りが僅かに解ける
直ぐ隣に緊張した面持ちのエルオーネの姿
そして、エルオーネに幾度か話し掛けようとして話し掛けられずにいるらしいアーヴァインの姿
道すがら、エルオーネを狙っているというガルバディア軍と出逢うことも無く、モンスターに襲われる事もなく無事にここ迄辿り付くことが出来た
エスタで最も安全な場所
それでいて、最も危険な場所に………
時折聞こえるモンスターの出現情報
その度に慌ただしく出掛ける兵士達の姿
長い廊下を会議室へ向け歩く途中、戦闘準備に追われる姿が見える
移動中の車内では限られた情報しか入っては来なかった
不可解なガルバディア軍の動き
各地のモンスターの状況
そして、“魔女”に関する僅かな情報
重い口と、歯切れの悪い言葉と
“詳しいことは戻ってから報告します”
という何時にない真剣な言葉
詳しいことは言わなかったけれど、推測は成り立つ
エスタ兵の大部分が聞くことの出来る通信ではうかつに話す事はできないということ
つまり、良い結果ではないということ
心の中に感じる重いしこり、緊張感とも違う何かがじわじわと広がっている
きっと現状は厳しい
きっとどうにかなるんて事はとても言えないけれど
―――宇宙からは全員無事帰還を果たした
飛び交っていた情報の中で、聞こえた明るいニュース
正面に巨大な扉が現れる
会議室の扉が開く
「………無事だったな」
噛みしめるような言葉が聞こえた
 

 To be continued


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