会議5



 
音も立てずに扉が開く
目の前に現れる広い部屋
そして数々の人の姿
部屋の中にいる、決して少なくは無い人々
その幾つか―――大部分は知っている人の姿
会議は中断したまま、話し合いは先に進んでいない
決定すべき人が結論を下せずにいるから
意見を言うべき人が何も言わずにいるから
重苦しい空気の中、エルオーネは小さく足を踏み出す
恐くない訳じゃない
けれど信頼している、信じている
それに、今がチャンスだと思う
長い間逃げ続けていた事、隠れ続けたいた事を終わりにする最後のチャンス
気配を感じたらしいラグナが顔を上げる
何かを言いかけて止めたその姿へと、エルオーネは微笑んでみせる
上手く笑えたかは解らないけれど、もう決めたから
隠れて、逃げて、結局後に残ったのは後悔
だって、あの時隠れたりしなければ、あの時もその後も、逃げ出したりしなければ、もっと早く“家族”と再会出来た
それを知ってしまった
だから、これは私の決意
二度と後悔したくないから………
「それで私はどうすれば良いの?」
幾つもの視線が振り返った

辺り一面を覆う暗闇
目をこらしても何も見えない
どれだけ歩いても、何処まで走っても何も無い
何処までも続く闇の世界
姿も見えず、声も聞こえないのに、時折訪れる何か
それだけがこの世界の全て
―――誰か助けて
何度も何度も呼んだ声は誰にも届かない
だって、誰も助けに来てくれない
唯一現れるアレは………
ぞくりと肌が泡立つ感覚
冷たい何かが身体の奧へと入り込んで行く
誰かの悲鳴
誰かの恐怖
誰かの絶望
誰かの憎しみ
誰かが唱える滅びの言葉
心が恐怖に声を上げる
―――誰か助けて、助けてくれるなら何だってするから
―――助けて!!
悲鳴を上げた私の耳に、遠くから音が聞こえた

私がやる事は理解できた
言い切れるほど何度も力を使ったことがある訳じゃないけれど
過去何度か数をこなした中で、解っている事が少し
送る事ができる相手も、送る先になる相手も、私が知っている人で無ければならないって言うこと
知っていたとしても、私が実際に知るよりもずっと前には送れないということ
だから、未来の魔女は開発された機械を使っても己が望む時へと行く事が出来なかった
それでも、ソレを知っているだろう“魔女”が私を望むのは、きっと行きたい先が私は行くことのできる時だから
だから、たぶんその作戦も上手く出来ると思う、ただ一つを除いたら………
私の能力に付けられた最後の制約
送る人と送られる人が同じではいけないということ
「たぶん、同じ人の過去には送れないの………」
その人の過去へと送ることは出来ないということ
だから、魔女アデルの身体から過去の魔女アデルの身体へとジャンクションする事は出来ない
アデルの元から別の魔女の元へと送るならばそれは魔女イデア………
「それはダメだ」
伺う様にイデアを見る人々の中で、ラグナが否定の声を上げる
「それをやると矛盾が生じちまう」
矛盾?
不思議そうに首を傾げた人々の中で
「それなら新しい魔女にやって貰えば良いでおじゃる」
オダイン博士が明るく声を上げた
 
 

 To be continued


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