魔女の騎士1



 
誘い込まれている
というのは感じていた
遠くに聞こえる戦いの気配
居ても可笑しくない、むしろ居なければ可笑しい所に配置されていない兵の姿
あっさりと辿り着いたこの場所まで、消耗することなく辿り付けた事は良かったと思うべきなのだろうか?
何の部屋なのか判断が付かない開けた場所で、以前魔女の傍に付き従っていた少年の姿があった

白いSeeD
目の前に居るのはイデアのSeeDだと言う白いSeeDだ
そういえば、“魔女イデア”の傍に付き従うようにしてはりついていたか
想い出したのは幾度かの対戦
幾度かのすれ違い
「魔女の元へは行かせない、魔女は俺が守る」
高らかな宣言と共に、武器が構えられる
白い刀身、諸刃の刃
刃を振り下ろし、斬りかかってくる
相手と俺達の間へ風神、雷神達が滑り込む
「君の相手は僕たちだよ」
―――真実の敵へと辿り着くまでに、なるべく消耗は避けなければならない
本来の作戦が実行されるまでに戦う相手は少なくとも1度
こいつの出現で少なくとも2度
魔女アデルまでの戦いは基本的に彼奴等に任せている
同じSeeDを名乗っていても、全く別の所属だった彼奴―――魔女の騎士―――の実力は良く分からないが、雷神達が負けるはずは無い
いっそここは彼奴等に任せて俺達は“魔女”の元へ先に行ってもいいんだが………
今後の作戦の都合と進行方向の問題でどうやら此処で足止めの様だ
魔女の騎士の実力を見せて貰おうじゃねーか
アーヴァインの銃身が火を噴き、戦いの幕が上がった

多勢に無勢
同様の実力の者達が集まったのなら、数が多い方が勝つ
それが普通のことで、通常、特殊な条件が揃いでもしない限り当たり前の事
そう教わっていたし、実感もしていた
その認識に誤りが無いのだとすれば、魔女の騎士を名乗った男の実力が、アーヴァイン達よりも上なのか、それとも………
目の前で繰り広げられているのは3対1の戦い
息のあった攻撃は際どいところで避けられ、ぎりぎりの所で跳ね返される
実力が上だと言われればそうなのか、とも思うけれど、何処か感じる違和感
「なんか可笑しいよ」
スコールの疑問を代弁するかのようなタイミングでセルフィの声が上がる
振り下ろされた巨大な棍を跳ね返す腕の動き
三方からの攻撃へと放たれる魔法の力
細やかな動きに感じる違和感
確かに、何かが可笑しいんだ………
「魔女の力を借りてるな」
不意に近くで聞こえた言葉
「どういう意味だ?」
「そのまんまだ、理屈は知らないぞ、どうやってか魔女がその力でそいつの実力以上の能力を与えるんだ」
不自然な動き
鮮やかに繰り出される魔法の数々
―――魔法を操ることが出来るのは“魔女”のみ
ああ、そうか
違和感の元、実力とは違う力、力を借りるという事
「つまりあいつの実力じゃ無いってことだな?」
つまらなそうにサイファーが呟いた
 

 To be continued


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