ジャンクション3



 
―――悔しいだろう
―――無念だろう
―――私が、力を貸してあげよう

“魔女”は死なない
“魔女”は“魔女”である限り死ぬことは出来ない
それが何故なのか、“魔女”がこの世に誕生したその瞬間からそうだったのかは誰も知らない
理由が分からなくてもそれが真実
“魔女”の本能が身体を動かす
新たな“魔女”になるために
人としての本能が探し始める
己の生命を終えるために
私という存在が消え去る寸前、誰かが私を拾い上げた

力を上げよう、誰よりも強い力を
力を上げよう、誰にも負けない力を
力を上げよう、理想を実現する為の力を

甘い誘惑が私取り巻いてく
心をくすぐる言葉
魅惑的な申し出
何故か抗うことの出来ない思念
それが、適うのならば―――
無くなりかけた心が言葉を紡ぐ

聞こえてくる“魔女”の誘惑
絡みつくように伸ばされていく“魔女”の気配

けれど、私の命は………
望むのならば叶えよう
誰にも負けない力をやろう
私のこの力を貸してやろう
だが………

畳み掛けるように紡がれる言葉
ああ、アデルが取り込まれていく
近くて遠い場所で、私は、私達はソレを見つめている
アデルの最後を
そして“アデル”誕生の瞬間を

確かに、今のままでは無理がある
けれど―――
身体が動き出す、明確な意思を持って歩き出す
足取りは重く“彼”の元へ
ぎこちなく動く身体が彼の傍へと膝を付ける
「………アデル………」
微かに聞こえた声
此処にいるのは近しい存在
誰よりも近くに居た人
彼は―――
手が伸びる、指が触れる
取り込んでしまおう
笑い声が聞こえる
復活の為に、取り込んでしまおう
笑い声が幾重にも重なって木霊する
唐突に彼の姿が消えた
そして、そうして―――

悲鳴が上がった
悲鳴が、上がる
幾つも上がる声
幾人もの声
“魔女アデル”が誕生する
全てを飲み込んで、全てを取り込んで“魔女”が創られていく
悲鳴をかき消すように聞こえてくる高らかな笑い声
私が連れてきた遠い世界の“魔女”の声
幾つもの悲鳴を飲み込んで、狂ったような笑い声が木霊する
―――これが始まり、コレが全ての悲劇の始まり………
もう直ぐ“魔女”が時間圧縮を始めてしまう、今すぐにでも戻らなければ………
―――エルっ!
近くて遠い場所で私を呼ぶ声が聞こえる
力強い声に導かれて私はようやく動き出す
直ぐ側で立ちすくんでいる彼女の手を取って
元の場所へ
私が今あるべき場所へ

離れる寸前、アデルが上げる絶望の声が聞こえた

 To be continued


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