魔女の城7



 
進むにつれ、闇が深くなっていく
モンスターが姿を現す頻度もまた上がっていく
足取りが徐々に重くなっていく
部屋の隅へと溜まった埃
積み上げられた何かの残骸
濃厚な“魔女”の気配に、鋭いはずの感覚が薄膜に包まれたかの様に鈍くなっていく
もし、モンスター以外のモノ………知能の高いモンスターでも良い………が身を潜め奇襲をしかけてきたならば、攻撃を受けるまでその存在に気づかないかもしれない
緊迫した空気があたりを包む
城内のひときわ暗い一角に、上へと伸びる階段があった

長い階段の果てにあったのはただ一つの扉
たぶんあそこが“魔女”の住処
高い塔の最上階、窓一つないこの空間の中で暗闇の中に幽かに浮かぶ扉
たぶん―――きっと、あの中に“魔女”はいる
空気がにわかに緊張感を帯びる
―――最後の戦い
それぞれが武器を握り、そして確かめ合うように視線を交わす
覚悟と準備は良いか?
声にならない問いかけを聞いたそのとき、獣の咆吼が響きわたった

幻の様に揺らめきながら、巨大な魔物が現れる
次第に増していく存在感
つい先ほどまで何もなかった空間へ何処かより出現した生き物
扉をふさぐように、現れた1匹の魔物
今までにあったそのどれよりも巨大で禍々しい存在
頭が巡る、凍り付くような視線がこちらへと向けられる
魔物の口元が、まるで邪悪な笑みを浮かべたかのようにゆがむ
「避けろっ」
誰かの声が耳を鋭く打つ
反射的に動いた身体
ついさっきまで彼等が立っていたその場所を炎が焼き尽くす
「そう簡単には辿り着けないって訳ね」
これがきっと、“魔女”が持つ最後の配下
確信がある訳じゃない、けれどそんな予感がする
「倒さなければ先に進めないって所だね」
戦闘にあわせ、立ち位置を変える彼等の背後から魔法が襲う
「なら、やるしかないね」
その言葉を合図に、攻撃が始まった

塔の中、階段と扉の間という限られた狭い空間
巨大な羽根と身体を持つ魔物にとっては戦うには不利な場所
身体の自由はきかないはずで、小さな動きなど望めるはずもない
戦いを進めるには有利なはずだった、通常ならば―――
魔物の口からはき出される炎
何の予備動作も必要とせずに出現する魔法
鋭い刃と化した巨大な爪
同時に繰り出される複数の攻撃は、避けるだけで精一杯だ
攻撃の手がゆるむまで時間をかけるか
………体力の限界はこっちの方が早く来る
迫り来る炎を強引にかいくぐりサイファーは、魔物の身体へと攻撃を仕掛ける
「危ないっ!」
聞こえた声に、反射的に動く身体
頭上から振り下ろされた腕を弾いた根
距離を置いた所から聞こえる銃声
「来るぞっ!」
ゼルの声とほぼ同時に生まれる稲妻
空気を震わせ衝撃が走る
キスティスが癒しの魔法を発動さようとする
魔物の目がキスティスへと向けられる
傷を癒すことができなければ、それだけ勝算は薄くなる
魔物が炎をはき出そうと口を開く
握りなおしたガンブレードが手の中で小さく鳴る
一瞬、スコールとサイファーの視線が交わる
魔物が息を吸い込む音が耳を打つ
「ゼルっ!」
「任せろっ」
魔物の口から炎の揺らぎが見えた瞬間、スコールとサイファーはモンスターの元へと走りだした
 

 To be continued


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