魔女アルティミシア1



 
一歩ずつ近づいてくる魔女の姿に感じるのは恐怖
自分たちとそれほど違わないその姿に圧倒される
今にも逃げ出しそうになる身体に叱咤する
魔女の声が聞こえる
声が頭の中で幾重にも反響する
憎しみの声、憎しみの言葉
SeeD達に対する深い憎しみ
自分以外の人間へ向かった強い憎悪
どこまでも暗い思いが流れ込んで来る
―――記憶も思い出も極限まで薄められ
記憶を浸食しようとする存在
―――何もできず、考えられず、思いすらなにもない
すべてが緩慢に落とされていく
魔女の声
魔女の言葉
力を秘めた魔女の叫び
何も残らない世界
何一つ存在しない世界
“自分”以外のすべてが失われた世界で、何をするというのだろう
魔女がまた一歩近づいてくる
魔女の邪魔をする自分たちへ
魔女を妨害する世界へ
魔女が怒りの声を上げる
「さあ、誰が私と戦うのだ!?」
魔女の声が衝撃となって、身体を走り抜けた

空間が変わる
ここにある自分たち以外の全てが、敵意を持つ
足下に感じる頼りない感覚
身体を支える、床の存在が曖昧になっている
近くに在る“魔女”の存在
“魔女”まで続く距離がうつろう
魔女の顔に浮かぶその表情だけが、やけにはっきりと見える
今まで一度も味わったことの無い感覚が身体を襲う
まるでこの身体が自分のモノでは無いような、不可解な感覚
どこかぼんやりとした感覚の中で、戦いが始まる
辺りに飛び散る魔法
まっすぐに身体を貫こうとする魔法の力
どこかぼんやりと、幾重にも覆う幕に隔てられたように
声をかけ呼び交わす、幼い頃の友人達の声が聞こえる
―――私を崇めろ
耳元でささやく魔女の声が聞こえる
―――さあ、跪くが良い
ささやかれる言葉と不気味な気配に反射的に両腕が動く
両腕にかかる重さ
しっかりと握りしめたガンブレードの重み
刃にかかった物質の抵抗
突然、様々な音が耳に飛び込んで来る
「避けろ、スコール!」
耳を打つ声に身体が反射的に従う
身体をかすめる氷の刃
軽く触れただけのはずの箇所から、血が噴き出す
「スコール下がって!」
溢れる出る血の流れに指示に従ったスコールへ回復の魔法がかけられる
「大丈夫か?」
言葉をかけて、魔女の元へと走り抜けていく背中
目の前で展開される激しい戦い
「ああ、大丈夫だ」
クリアになった視界、思考
魔女の視線が向けられる
遠く聞こえる魔女の言葉
………もう、大丈夫だ
魔女の声は聞かない、魔女の声は聞こえない
魔女の動きを止める様に、魔法が放たれる
顔をかばうように上げられた魔女の腕
遮られる視界
遮られる視線
互いに声をかけることもなく
スコール達は、それぞれの攻撃を魔女へと放った
 

 To be continued


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