魔女アルティミシア4



 
血に濡れた彼が、近づいてくる
見知った人の姿
よく知った人の姿
無意識に下がった足が、何かに当たる
おろした視線に映る人の姿
辺りを朱に染めて倒れる姿
見たこともない凶悪な表情で近づいてくる
何か言っている声が聞こえる
醜悪に歪む顔
あり得るはずのない表情
「オマエモソウナリタイノカ?」
ざらざらとした声が聞こえる
指さした先に目は向けられない
また1歩近づいてくる
光に浮かび上がる3人の姿
良く知ったこと
まったく知らない、人達
どこかから差し込む光が、鋼に反射する
ラグナの持つ剣が、冷たく光る
―――剣?
視線をこらした先に
確かに鋼の刃が映る
―――頭の奥で声が聞こえる
幾重にも響く声
感情を逆なでするような声が聞こえた

なぎ払ったガンブレードが彼を切り裂く
腕が伝えてくる感覚は、肉を切る感覚と、空を切る感覚
悲鳴が上がる
似ても似つかない声
それでも、偽物だと解っていても
目を開けることが出来ない
傷つき倒れる姿を目にしたくはない
魔女が作り出した幻は
何もかもが精巧に出来ている
五感に感じる感覚
そして、そこにあるという気配
気配を感じる事が出来れば、その姿を見ることなく戦うことは出来る
魔女の送り込んで来る幻と現実と
二重写しに感じる気配
時折、何かの気配が混入する
魔女の気配?
意識を集中しなければ気づくこともない微かな気配
幾度目かに捕らえたその気配へ向けて、スコールはガンブレードを振り下ろした
 

 To be continued


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