はじまり1



 
澄んだ音が1つ辺りに響いた
拡散していた時の流れが止まる
無数の時間が重なり合い
幾人もの魔女が存在している
「―――始まりの、魔女?」
スコールの言葉に、静かに“魔女”が頷く
様々な時間から、魔女達が声を上げている
―――音は何一つ伝わってこない
「だが、その姿は………」
目の前に在る魔女の姿は、つい先ほどとどめを刺した“魔女”と同じモノ、全く同じ形
「………あれは………」
“魔女”の視線が揺らぐ
どこか遠くへと視線が彷徨う
「あれも、あの存在も確かに私」
突然、幾つもの嘆きの声が聞こえる
「全てが私であり、犠牲となった哀れな者達」
辺りの光景が色褪せ、取り囲んでいた筈の時間達が消えていく
静かな“魔女”の声が聞こえた

自分を呼ぶ声に、サイファーは足を止める
耳に聞こえるソレは、懐かしい音
良く知っている声
いつの間にかサイファーの周囲に在る時間が流れを止めている
視界の隅で瞬く光が見える
視線を合わせれば、呼び寄せる様に強くなる光
見えるのは、遠い昔の光景
朧となった記憶
「上等だ」
あからさまに呼びつける光へ、過去の時間へとサイファーは足を踏み入れた

―――力が欲しい
願いの言葉
―――誰にも負けない力が欲しい
それは純粋な願いだった
果てなく続く荒野に幾つも折り重なる骸
強大な力を持つ者が空を飛び
幾つもの争いが続く世界
また1つの争いが終わり
―――全てを凌駕する力が欲しい
いつもと変わらない願いを抱いた
何百、何千と思った願い
どれほど願おうと答える者も居なかった願い
願いを聞き届ける者など存在しなかった筈の願い
―――その願い、その身を犠牲にしても叶えたいと願うか?
その時に限って、悪魔が手をさしのべた
―――偽り無く力が入るというならば………
それが始まり、延々と続いた悪夢の始まり
あの時深く考える事無く返した言葉が、世界の全てを巻き込んだ悪夢の始まり
 

 To be continued


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