解放3



 
「行くと思うか?」
打ち立てられた作戦を知り、交わした会話
『どうだろうな』
全ての時間が1つになる瞬間
思い1つであらゆる時間へ移動出来るというその時
全てが始まったその瞬間へと時を超える事が出来る
―――やり直すにはまたとない機会
少し離れた場所で思い沈むラグナの姿が見えていた

ルナテイック・パンドラ突入目前
キロスはウォードを誘い部屋を出た
あわただしく動く兵士達の姿を見ながら
2人はしばらくの間無言で立つ
最終決戦へ向けた緊迫感を感じる
『いよいよだな』
「………そうだな」
私達はラグナの後悔の深さを知っている
『行くと思うか?』
「………どうかな?」
それと同時にラグナの生き方も、知っている
辺りのざわめきをよそに、2人の間に落ちる長い沈黙
きっと選ぶだろう選択
………もしかしたら選ぶかも知れない選択
どちらを選んだとしても、それはラグナが選ぶ選択だ
「私達がどうこう言う事じゃないな」
一度抱いた後悔は消える事はない
きっとどんな選択を下したとしても、大多数の納得と少しの後悔を抱く事になる
『面倒な男だな』
「いつもの事だ」
船内に、戦闘待機の命令が流れた

世界が歪む
歪んだ空間の中に、様々な光景が浮かんでは消える
見覚えのあるモノ
見たことも無いモノ
昔の光景
これから先、未来の光景
めまぐるしく変わる光景に、気分が悪くなる
感覚が狂う
姿勢を保つ事が出来なくなり、いつの間にか膝をついていた
近くに、同じように膝を突く2つの気配
目をこらしても、2人の姿は見えない
目の前を通り過ぎる光景の中に、その時が見えた
長い旅の始まり
できるならば、と願った時間
その気になればすぐにその時へと移動が可能だろう
………それは、私の役目ではない
どれだけ苦しみを知っていても
どれだけ、渇望した願いを知っていたとしても
手を出す領域ではない、私もウォードも他の誰であろうとも
様々な時が通り過ぎた
永遠にも感じた一瞬が通り過ぎた後
私は以前と変わらぬ光景を目にした

『何も起きなかったな』
「起こせなかったと言うべきかな」
喜びに沸く人々を遠目に、キロスとウォードは互いがすれ違うほんの一瞬言葉を交わす
『起こさなかった、だろう』
ウォードの言葉に返事は返さず、キロスは足早に歩き去った

「レインはどこっ!?」
期待に満ちた目でエルオーネが聞く
「レインなら何年も前に死んだ」
目覚めたばかりのエルオーネの声が響く
悲しみと嘆きと後悔と………
様々な言葉の数々
小さな少女が現実を受け止める迄、私は何も言わずただその場所に居た

エルオーネが目覚めても、ラグナやスコールには話してはいけない
極秘で伝えられた私の命令
私が連れて行くまで決してラグナとスコールを近づけない
言葉にすることなく交わされたウォードとの約束
これ以上無意味に傷つく必要はない
ラグナも、エルオーネも
漸く全てが終わったのだから
 

 To be continued


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