解放5



 
幾度目かの時を移動する感覚が身体を襲って
開いた視界の中に、随分昔に終わった筈の光景が飛び込んで来る
時間圧縮の前
未来へと旅立つ前の光景
時の彼方へと旅立った時からいくらも過ぎていない時間
ゆっくりと辺りを見渡したスコールの耳に
「―――おかえり」
聞き慣れた声が聞こえた
いつもと変わらない笑顔で、両手を広げる姿が見える
「………ただいま」
不思議と身体を安堵感が包んだ

“魔女”という存在が何故生まれたのか
“魔女”が何者なのか
“未来の魔女”アルティミシアはいったいどんな存在だったのか………
SeeD達と別れた場所で、自分が体験した数々の事を語り
ゆっくりと確かめる真実と永遠に知ることの出来ない真実
スコールは理解出来た事を懸命に語り、理解出来ない事をそのまま伝える
知ることの出来た事柄の中で、重要な事は“今”と“未来”に繋がる事
解っている事は未来に続く“魔女”が今も存在していること
いつか解らない未来にアルティミシアという“魔女”が生まれるということ
“今”から先の魔女をどうにかすれば様々な悲劇は生まれない―――消えて無くなるかもしれないということ
―――決してそうはならないということ
アルティミシアは“未来”の魔女だった
けれど、その“未来”はスコール達にとって、この世界にとって“過去”の事だ
納得なんて出来ない
理解なんか出来ない
けれど………
「“魔女”の存在に気をつけなければならないのは確かだろうな」
全ての話を終えた後に生まれた、長い沈黙の末にラグナが言う
「今からの先の魔女は全て“良い魔女”でいてもらってその力を使い果たして貰わないとならない」
魔女がこれ以上の力を望む事が無いように
魔女が魔女の力の源を知ることがないように
魔女の力を補給する事が無いように慎重に―――
「いずれ“魔女”の力は消える事になる」
自分たちが知らない未来が訪れる
世界を絶望に陥れる“未来の魔女”が居ない世界
これから起きる未来なら、自分が知っている未来と同じでなければならない
そうでなければ、全てが可笑しくなる
“魔女”がこの時代に現れたことも無くなる
けれどそうならない事を知っている
自分か行った未来はこことは違う場所で
自分が行った過去もこことは違う世界
スコールはソレを実感していた
―――イデアの家で体験した事は自分が知っている、自分が見た光景とは別のモノだから
 

 To be continued


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