冬の平穏



 
「………初顔?」
エルオーネの言葉に、ラグナとスコールが一瞬顔を向ける
「いんや、昔から居るぜ」
「初顔は居ないはずだけれど?」
「………そう」
2人の言葉に返事を返して、エルオーネは“そこ”を避けるようにして室内へと入る
とたんに、向けられる幾つもの視線
しばらく視線は観察する様につきまとって、やがて興味を無くした様に反らされる
誰かが動くたびに面白いくらいに示される反応
似たような反応だけど、私はまだ警戒されているかな?
この家の住人の中で一番新しいのは私
とは言っても既に一年近い月日は経っているけれど
うーん、でもやっぱりこの子達にしてみれば見慣れない人、かな?
この家の“住人”らしい彼等へとエルオーネは視線を向ける
この家広いからね
無駄に広い家の中で、三々五々に散らばっての生活
時には“居住区”からはみ出して生活している彼等と顔を合わせる機会はあんまり無い
ごくまれにばったり出くわしたり
すれ違ったりしたことはあったけれど
それでも全員と顔を合わせたことは無かったみたいで、初めて顔を合わせる子も幾つか
寒くなったからなのか、次第に姿を見せ集まってくるようになった彼等は
エルオーネが少し動くたびに、素早い反応を見せる
他の2人の時とは違う反応に少し寂しい気がするけれど
そのうち慣れるだろうし
エルオーネは彼等のコトを気にする事無くいつも通りに行動している

数日間観察をしていて解ったことが幾つか
彼等の中の力関係はハッキリしているくせに曖昧
一番強い子は決まっているけれど、その他は結構適当………に見える
もっと観察していれば何か違うかもしれないけれど
そして、彼等のスコールに対する対応も結構雑
今も、暖炉の前に陣取ったスコールの上に幾つかが乗ってるし
それと対照的に、ラグナに対する対応は、丁寧って言うのかな?
1人向こうから歩いてきた子が、ラグナの顔を見上げて、迂回して………
「………重くない?」
スコールの上にまた1つ追加
「慣れた、から………」
スコールから返ってくるのは微妙な反応
やっぱり、雑に扱われているっていう自覚はあるんだろうしね
居ることは知っていたけれど、それにしても本当に………
今までどこにいたのか、部屋の中で固まっている幾つもの猫の姿
住人がこんなに多いなんて思っていなかったな
多くても片手で足りるほど
そう思っていたけれど、現実は少なくても両手の指に余るほど
暖炉の前から、声が聞こえた
視線を向ければ、数匹の猫に押しつぶされたスコールの姿
『大丈夫?』
と声をかけるよりも早く、スコールが慣れた様子で脱出する
その様子にほんの少し、寂しさを感じる

こっそりと、ため息をつきかけて
ふいに間近から聞こえた声に、エルオーネは視線を向ける
エルオーネの足元で、顔を見上げるようにして一声鳴いて、当たり前みたいな顔をして足の上で丸くなった
 
 

 End