くつろぎ


「うん?」
いつもと同じ様にリビングの扉を開けて、違和感を感じる
部屋が模様替えされているって訳では無い
いつもの様に暖かな空間
部屋の中に視線を巡らし、内心首を傾げながらソファーへと座る
いつもの様に雑誌を開いて
また感じる違和感
もう一度室内を見渡す
壁際へと動いた視線が止まる
暖炉の火が消えている
それと、暖炉の前に居たはずの者も姿を消している
「………なるほどなぁ」
今日は暖かいからなぁ
日が昇るにつれ、暖房は要らなくなり
あいつらももっと暖かい場所に移動したってことだろう
今日はもっと心地よい場所がある
「なら、移動するか」
ここに居ても、きっと誰も来ないだろう
勢いよく立ち上がると来たばかりの部屋を後にする
窓から暖かな光が差し込んでいた

家の片隅に備えられたサンルーム
長い間、本来の使い方をされていなかったこの場所
扉を開けると、複数の視線がこちらを向き、すぐに興味を無くした様に視線がそらされる
「また、増えたか?」
思い思いの場所でくつろぐネコ達の間に少し数を増やした植物が見える
「………どっちが?」
独り言としてつぶやいたはずの言葉に返事がする
良く知った気配を感じ
ソファーから、スコールが身を起こす
今日は家に居る日だったか?
居るとは思わなかった相手の出現に、こっそり驚きながら視線を辺りに向ける
「こりゃあ、どっちも増えたか?」
見覚えの無い植物
それと、見覚えの無いネコ
ラグナの言葉にスコールが肩をすくめる
「警備は厳しいはずなんだがなぁ」
家のネコが知らない間に繁殖したってのはさすがに無い
どっかから入ってきたってことなんだが………
「今更だろ」
「確かにな」
軽く息を吐き出すと、少し場所の空いたソファーへと腰掛ける
毎年この時期になるとなぜか増えるネコ達
毎年起きるこの現象は、やっぱり誰かが仕組んでるってことだろう
「まぁ、問題はないしな」
ラグナのつぶやきに、幾つかの視線が向けられ、興味なさそうにそらされた

ガラスを通して届く日差しが柔らかく、暖かい
体の半分を暖める日差しに大きく伸びをして体の向きを入れ替える
入れ替えた場所に暖かな光が注いだ
  
 

 End