祈り


 
「………ラグナ………」
声が聞こえる
呼びかける声は、いつも優しい
誰にもまねできない口調……最愛のその人の声
微かに口元が綻ぶ
微笑みを浮かべ、声を聞く
静まり返った深い森は、あでやかな月の光を受け優しくたたずむ
木々に、草花に、キラキラと銀色の光がまとわりつき幻想の世界へと誘う
見上げれば白き月
銀の光はラグナの上へと降り注ぐ
不意に感じる泣きたくなる程の愛おしさ
今にも泣き出しそうな表情で
「レイン………」
最愛の人の名前を呼ぶ
つぶやいた言葉に月の輝きが一層増していく
「ああっーーー」
こぼれ落ちた声は歓喜
愛されている、許されている………
「……レイン……」
甘くとけていく声
月は銀の光をラグナへと降り注ぐ
祈りを……祈りを捧げよう………
悲しまないように、寂しい思いをしない様に……
最愛の女性に、聖なる祈りを………
人は月に祈る
月は祈りを届ける
 
 
END