妖精の贈り物


 
今日は冷え込みそうね
レインは暗い空を見上げていた
灰色の空は重く圧し掛かっている
「レイン、雪降るって!」
窓辺でたたずむレインの背後から明るい声が掛けられる
雪?
天気予報ではそんな事は言ってなかった気がするけど……
「誰がそんな事言ったの?」
天気予報が変わらなければきっとそんな事をいうのは一人だけだけ
レインは振り返り、エルオーネの元へと近づく
「ラグナおじさん!」
やっぱり………
「雪降るの楽しみだね、今年はどれくらい降るかな?」
嬉しそうなエルオーネの言葉に相づちを打ちながら
まったく、どういうつもりかしら!?
内心でラグナに対する文句を並べる
雪が降るなんて言ってね降らなかったらエルががっかりするのよ
「それで、ラグナは?出かけたの?」
階下から、いつもの賑やかな声がしない
「うん」
帰って来たら、覚悟してなさい
レインは、難しい顔をして階段を下った

「そのことなら心配要らないって」
問い詰めたレインに満面の笑顔が帰ってくる
「心配ないって……予報では雪が降るなんて言ってないのよ?」
何か根拠でもあるのかしら?
自信有りげなラグナの様子にレインは戸惑いを覚える
「確かに言わなかったけどさ……こういう日には降るんだよな」
困ったように、頭の後ろを掻きながらの答え
………経験、なのかしら?
的確な言葉が見つけられない時のラグナの癖
「じゃあ、確かに今日雪が降るのね?」
誤魔化したり嘘を付いたり出来ないようにじっと目を見詰めてもう一度確認をとる
「ああ、絶対降る」
満面の笑みで肯定される言葉
「そう…………」
雪、か
レインは窓の外を見やる
降れば良いわね
ここまで言うのだから、信じて見ようか?

その日の夜気温が急に落ち込む頃
この冬最初の雪が降った
 

 
END