英雄達の舞台裏
(3 SideK)


 
管理室の扉は、半ば開いた状態でキロス達を待っていた
無防備な事だ……
もっとも、自分達以外の人間が近づくはずもないと思っているのだから、仕方のないことだろう
扉の中から微かに声が聞こえる
同時に、通信機から、呼びかける声
さすがに様子がおかしい事に気づいたか……
私達の行動がそれなりに早かったとはいえ、ここまでよく持ったのだ
"関係者以外立入禁止"
厚い鉄の扉に隠れるようにして、ウォードが扉に手をかける
キロスは、反対側の壁に身をよせ、僅かに開いた扉から中の様子をのぞき込む
人影は見えない、扉の内側にもう一つ扉がある
用心深い事だ……
気配は、その扉の内側からしている
「内側の扉だ」
声を出さずに、ウォードへと知らせる
二人は、音を立てずに扉の隙間から中へと体をすべり込ませた
"コトリ"
小さく物音がする
気づいたかな?
中の気配は緊張した空気を纏っている
『時間がない、一気に踏み込むぞ』
扉の左右に別れ、壁へと身を寄せる
ウォードが扉へと手を伸ばし、一気に開いた
予想通り、扉の内側に男が立っている
キロスは、扉が開け切らない内に中へと飛び込み、男へと襲いかかる
男は反射的に、手にした銃の引き金を引く
男の右横に回り込み、横から銃身を掴む
弾丸はあらぬ方へ打ち出される
力任せに銃を引き寄せ、つられるように倒れ込んだ男の腹を強く蹴り上げた
「ぐぅっ……」
倒れ込んだ男の手から、キロスは、銃を取り上げた
男を捨て置き、キロスは内部へ入り込む
中には様々な機械がならんでいる
「さて、照明はどれかな?」
部屋の一面を埋める機械達へ、キロスは視線を走らせる
部屋の外で、ウォードは、テロリストを捕らえ、逃げ出す事のできないように縛り上げていた
どうやら、これの様だ……
キロスは、通信機へ向けて、決められた合図を送る
通信先が解らないが故に全通信機へ向け発信した微かな雑音
後は、彼等の合図を待つだけだ
キロスはスイッチへ指をかけ、合図を待つ
『タイミングを外すな』
"ドォーン!"
階下から、強い振動と共に、音が響いた
キロスの指がスイッチを押す
ホテル内の照明がすべて消える
僅かな時間をおいて、再び明かりが灯る
ラグナ達なら今の時間で充分だ
「さて、私達も合流するとしよう」
キロス達は、上階のレストランへ向け、階段を駆け登った
 
 
 
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