英雄と夢想家
(おまけ)
各国への説明と報告
そして、遠回しに首謀者との対面を望む各国の声
それらの要求を快く受け入れ
エスタには、平穏が戻った
そんな中、大統領の元へ非公式に訪れた客人が1人
客人は、エスタ官邸内にある広い中庭へと案内され
高官達は、その場所を気にしながらも、決してそばに近寄ろうとはしなかった
ガラス張りの天井
室外で有りながら、室内でもあり
室内で有りながら、室外でもある
そんな不思議な空間の片隅に小さくもうけられていた東屋
その場所で、ラグナとスコールは、無言のまま向き合ってお茶を飲んでいた
樹木も何もない、ぽっかりと開いた空間
今までの経過で懲りたのか、周囲に人の気配はしない
今回は何も無かったはずなんだけどな……
目の前に座るスコールからは、怒っている様な気配は特に感じられない
国内の秘め事を話さなかったのは当然の事
その辺は、スコールも良く判っている
いや、スコールだからこそ判っている、というべきだろうか?
ラグナは、カップの底に残っていたお茶を流し込む
今回ばかりは、わざわざここまで来る理由と言うのが見つからない
………まさか、あの“偵察機”が拙かった訳じゃないよな?
無理矢理開発されたアレは、役に立っていた
それにあの場合は内部を探る手段として、必要な代物であったし
操作出来る人材が居なかったから、スコールに頼んだ
共同戦線という特殊な事態での行動としては、責められる様な事は何も無い
内心首を傾げながらスコールをそっと伺ったその眼がしっかりと合う
「………………」
「………………」
珍しく逸らされる事の無い視線
「……それで、今日は何の用なんだ?」
沈黙と、視線の圧力に耐えられなくなったラグナが思わず視線を逸らす
「……別に」
素っ気ない返事
視線がはずれる
「……そっか………」
無意識の内に空のカップに口をつけ、置いた
…………後考えられる事ってのは1つだけ
手がポケットに軽く触れ、離れる
彼女に渡された“鍵”の存在
けど、スコール居なかったよな?
記憶をいくら探っても
崩れ落ちる洞窟を脱出する途中、スコールと合流した記憶しか思い出せない
まさか、盗聴器……なんて事はないな
さすがにソレは気づく自信が有る
空のカップへと、お湯を注ぎ入れ、喉の奧へと流し込む
スコールの表情が微かに動く
とりあえず下手なことは口にしない事だ
「……それで、今度は何を隠してる?」
ラグが自分に言い聞かせると同時に、スコールの声が響いた
日も暮れ、訪れた夜の暗闇の中中庭から、静かで、緊迫した声が聞こえる
「だから、何も無いっていってるだろ」
ラグナの声と
「嘘をつくな」
スコールの声
何度も何度も長い時間繰り返される問答
次第に、スコールの声に折り混ざる感情
空を切る鋭い音が聞こえる
「あっぶねーなっ!」
慌てたようなラグナの声と、近づいてくる気配
「うるさいっ」
ソレを追うスコールの気配
「………スコールって案外短気よね……」
2人の様子を見て取り、エルオーネはため息をついた
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