英雄と人形
(開幕)


 
幼い頃家の倉庫で見つけた古い書物
開いた書物の中身は、見た事も無い文字の羅列
どうしても読む事の出来ないソレを持って祖父の元へと走った事が始まり
あの日の祖父の言葉は一言一句覚えている
私があのセントラの民の子孫である事
その書物が、祖先が残した研究資料だという事実
あの日から私は取り憑かれたようにセントラ文字を学習し、書物の解読に当たった
解読を終えた私が知ったのは、驚くべき事実
私の祖先が実現させていた偉大な成果
それはモンスターを自在に操る事が出来るというもの
この技術を復活する事が出来れば、どんなに良いだろう!
モンスターに怯える事もなくなるし、何よりモンスターを有効利用する事も出来る
私はこの研究を解明し、技術を復活する事を目標に頑張った
長い間努力を重ねてきた
長年の夢
だが、この偉大な計画を理解できる者はいなかった
実現すればどれほど素晴らしいものになるのか理解するものは、誰一人としていなかった
長い間重ねてきた研究
ある日、ふと思い立ち倉庫へと足を踏み入れた私は、もう一つの古い書物を発見した
長い間探し求めていたヒント
これで私は、研究を完成させる事ができる
モンスターを操り、支配下に置く事が出来る
幾度も重ねた研究
そして、私は研究を重ねながら、ある男達を雇った
金さえ払えばどんな事でも請け負うという者達
こんな者達の力は借りたくなかったが仕方がない
私には探さなければならないものがあり、しなければならない実験があり、手にいれなければならない材料がある
気に入らないが、目的の為コレも仕方がない
そして、ようやく待ち望んでいた報告があった
長い間訪れる事の出来なかった場所
私の祖先が使っていた研究施設

ひんやりとした巨大な施設の中
長い通路の奧に広がったさまざまな研究機材
その中の一室
巨大な空間、巨大な機械
これこそが私の求めていたモノ
凶悪なモンスターを意のままに操る事の出来る機材の数々
その片隅に、1体の人形が転がっている
不可思議に思い、人形に触れた
その瞬間、人形は眼を開き立ち上がった
これは、実験をアシストする為の機械
長い間こうして主人である私を待っていたのだろう
命令を待つその人形に、私は初めての命令を下した
「……作業を開始します」
人形の手によって、機械が動き出す
「……ですが、実験の為に必要なものがそろっておりません」
音も立てずに復旧する機械の中で、人形が重々しく告げた
 
 

 
 
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