英雄と魔法生物
(依頼 SideS)


 
「最近船乗り達の間で噂になっている事があるんだけれど、知っているかしら?」
依頼を受けたと呼び出された先、顔を合わせるのとほぼ同時にキスティスが問いかけてきた
噂?
「その様子だと知らないみたいね」
視線で向かい側に座る様に促される
机の上には依頼書の他、簡単な資料が置かれている
「………嵐?」
手に取った依頼書には嵐の調査と記されている
「そう、詳しいことはそこに書いてあるけど………」
起きる筈の無い、局地的な嵐が世界各地で発生している
依頼はバラム周辺の漁民を中心とした人々の連名
依頼書に付随された資料に書かれた情報の数々
嵐との遭遇情報、目撃情報
多いとは言えないが、決して少なくはない数
それと情報に添えられた時刻と場所
「被害状況は?」
場所は広範囲に及んでいる上に、発生していたと思われる時間の感覚が短い
「今の所深刻な話は聞いてはいないわ」
そういうキスティスの表情は決して明るいモノでは無い
それでもわざわざガーデンに依頼に来なければならない程には問題になっている
記載されている日付からはそれほど日数が経ってはいない
深刻な事態はまだでもその一歩手前
「調査をしてみない事には詳しいことは言えないけれど、場合によってはSeeDを派遣することになるかもしれないわ」
それほど面倒な事態で無ければ良い
特に反対する理由はなかったが、ただ漠然とした予感を感じた

調査結果が報告される
バラム周辺以外での遭遇情報及び目撃情報
場所の点在は考えていたよりも広範囲に広がっていて、世界各地と言っても可笑しくない
その代わりに、現象が発生しているのは海に限られている
その中でも特徴を上げるならば、陸に近い場所では無く水深の深い海域全般
嵐が吹き荒れるのは、半径1キロ程度の極狭い範囲
その領域をほんの少しでも超えると全く嵐の影響が無くなる
………なんだコレは
調査結果を読み進めるに従い決してあり得ない現象が並んでいる
「本格的に調べてみる必要がありそうね」
誰か、確認の為に嵐を発見遭遇する様に指令が下った

限定された一定区間に起きる現象
考え得るよりも多数の箇所での目撃情報
これはどう見たところでも自然の現象とは考えられない
室内にどこか白々しい沈黙が落ちる
吹き荒れる嵐
自然現象であり得ないならば確実にこの現象を作り出す手段が存在する
考えられるのは、魔法と科学の2つ
魔法の方は、こんな風に自在に魔法を操れる人間なんていうのは無理がある
科学の方は、難しいかもしれないが、機械さえ完成すればどうにでもなる
勿論半端じゃない技術力は必要ななるんだろうが、そういった技術を持っていても可笑しくない所が1つ存在している
万が一という可能性もある
連絡をとる必要があるかもしれない………

数日後、スコールはエスタへと連絡を入れた 

 
 
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